尾木ママ講演会より① 子どものこころとからだの問題

  • 全国

2021.09.24

世界中の国々が軌道修正をしながら進んでいる

世界中がまだ迷っている。コロナの正体がはっきりつかめたわけではない。私たちはこの病気との付き合い方をまだわかっていません。全米テニス大会は、「マスク着用やワクチン接種の制限なし」から一転「ワクチン接種の義務付け」に転じました。イギリスでは、マスクなしでのサッカー観戦により8試合で6400人が感染しました。あちこちの国々が動揺して、しょっちゅう軌道修正をしながら進んでいます。イギリスの例は実は感染対策の実際についての社会実験の側面もあります。ですが、映像だけ見て判断すると、その裏にあることはわからないから、気を付けて見るようにしましょう。
子どもたちが数多く感染しているデルタ株。南米由来のミュー株も出てきました。「えらい時代」になったな、というのが率直な感想です。
でも、こういうピンチの時、尾木ママはワクワクするんです。さあ、どうやってここから脱出するか、どういった新しい生活スタイルを作るか、どういう人間関係を作るか、そんなことを考えるんです。
14世紀にはヨーロッパでペストがはやりました。その後に起こったのがルネサンス、人間復興です。音楽、美術、文学など次々と名作が生まれた時代です。ゴルフもこの時代に誕生しました。そんなふうにして、これから僕もみなさんも、いろんな工夫をして、100年後、200年後には、「あのコロナの時代を生き抜いた高校生はこんな工夫をしていたんだ」と文化として残ることになるんじゃないかな、と思うんです。

さて、そんな中で今学校はどうなっているのか。NHK学園の生徒の皆さんは通信制で恵まれているからわかりにくいかもしれないけれど、全体像として捉えていきたいと思います。

子どもたちのこころとからだの問題

国立成育医療研究センターでは、2020年4月から2か月刻みで小学4年生から高校生を対象にアンケートを実施しています。
「ストレスを抱えている」という子どもは2020年4月で75%。2021年4月で72%。アンケートの開始以来7割を切ったことはありません。
うつ病を抱えている子どもは小学生で14%、中学生で25%、高校生では30%に上ります。うつ病になると絶望感から死にたくなったり、自殺する人が出てきてしまいます。昨年の小学生から高校生の自殺者は全国で499人。前年は399人ですので、100人も増えています。大学生を含めると、1009人もいます。自傷・他傷は24%に達しています。苛立ちはみんな一緒です。
からだのことで言いますと、肥満は小学校6年生で11.1%の増加。痩身も全学年で増加しています。皆さん不思議に思うかもしれませんね。オンライン授業が続いて、家でおやつを食べる機会が増えて、太ってしまうことはわかるけれど、痩せてしまうというのはどういうことでしょうか。
お母さんが忙しくて食事を作る暇がない、などさまざまな理由でご飯を満足に食べられない子がたくさんいます。学校が休校になると給食が食べられないんです。給食で栄養を取っているという子もたくさんいます。
「子ども食堂」って聞いたことがありますか。今では地域の子どもが集まる交流の場にもなっていて、必ずしも食事を満足にできないお子さんが駆けつける場というばかりではないけれど、そういうお子さんもいるんです。調べてみたら、子ども食堂の数は全国に5086もあるんです。
先日は、所沢の焼肉屋さんが200円で提供している焼肉弁当を、お金のない子どもには出世払いで分けているという話題をテレビで見ました。今、そういう状況になっているんです。「痩せてしまう」という状況もわかりますよね。経済悪化のしわ寄せが子どもたちのからだに及んでいます。

続きはこちら