通信制高校とは

今、通信制高校が伸びている?

日本が、「少子高齢化社会」であるとか「人口減少社会」と呼ばれるようになってしばらくたちました。当然ですが高等学校に進学する人の数も在籍しているはずの16~18歳の人の人口も21世紀の初め、2004年の127万人から、2018年には114万人まで減少しました。
ところが、通信制高校へ進学する人の数は、18万人前後で安定しています。つまり、高校進学者が少なくなっているにもかかわらず、通信制高校を選択する人の比率は着実に増えているのです。(文部科学省「学校基本調査」による)

なぜ通信制高校は存在するのか?

今年、開校55周年を迎えたNHK学園高等学校は、広域通信制高校のまさに草分け的存在です。開校当時は1964年の東京オリンピック直前、高度経済成長期の始まるころで、中学を卒業して就職する人が「金の卵」ともてはやされた時代でした。また太平洋戦争中に青春時代を過ごし、進学する機会を逃したまま社会に出た人もたくさんいました。
こうした人々に、放送を利用して働きながら学んでいただく場を提供しようというのが、N学の設立趣旨でした。
やがて、日本社会が安定期に入り全日制高校に誰でも進学できる時代が来ると、通信制高校の役割は終わったかに見えました。

全日制高校もすべての人に適しているわけではない

 いつの時代にも、学校での集団生活がなかなかあわない、という人はいます。かつては「登校拒否」などという言葉も使われていました。今でいう「不登校・引きこもり」です。小・中学校の段階では、そのような状態にあっても卒業できるのが一般的です。しかし義務教育を修了した高等学校、それも全日制高校となると話は簡単ではありません。一定日数以上の出席がないと、単位の修得・進級ができないからです。
 全日制高校にいては学業の継続がちょっと難しい…。そのような人々の問題が社会的に注目されるようになったのは、1990年代後半あたりからではないでしょうか。ここで再び通信制高校が注目される時代がやってきたのです。

ゆっくりと外の社会になじんでいく
――通信制高校、もう一つの役割

 人間関係にストレスを感じる人にとっては、毎日学校に通うのは苦痛なこともあるのは十分理解できます。通信制高校なら、ゆっくり焦ることなく通学―――外の社会との接触、に順応していくことができます。それが、通信制高校が「不登校・引きこもり」といわれながらも、きちんと高等学校の学業を全うしたいと考える人々の注目を集めるようになった第一の背景です。もちろん、通信制高校のメリットはそれだけではありません。N学の場合、教室の中では、生徒どうしは友達の状況を思いやって優しく振る舞う、N学自体もカウンセリングの体制を充実しひとりの生活や進路の指導に心を砕く、というプロセスが学ぶ人・保護者の方々の学校への安心と信頼を支えています。

そもそも通信制高校の教育とは?

突然ですが、NHK学園の英語の名称をご存知でしょうか?“NHK ACADENY OF DISTANCE LEARNING”といいます。

 直訳すると「遠隔地で学習する人のための学びの場」といったところでしょうか。学ぶ人と教える人(学校)が遠く離れているが、それでも、学びを達成させていく場所であることを示しています。「通信」は、その学びを達成する手段です。
 ここで思い出されるのが、江戸時代の国学者(日本古典の研究者)である賀茂真淵と本居宣長の師弟関係です。
 宣長は三重県松阪市の若き研究者でしたが、江戸で大学者として名高かった真淵から直接教えを受けたいと常々考えていました。しかし松坂から江戸は遥かに遠く、とても実現しそうにありません。ところが、真淵が伊勢神宮参詣の途上、なんと松坂に立ち寄ったのです! 宣長は宿に真淵を訪ね、初対面にもかかわらず、十年の知己のように一夜語り明かしたといいます。二人が会ったのはこの一度きり。以後は文通で、宣長は真淵に疑問点を質しては学問を深め、やがて古事記をはじめとする日本の古典研究の頂点を極めるに至ったのです。
 ここで注目したいのは、宣長は『自学自習』で基礎を学び、文通=通信によってさらにその学識を進化させたことです。文通は文字通り、宣長と真淵の一対一の世界、究極の『個別指導』です。
 これは、N学が目ざす教育の目標とも一致していて、まさに通信教育の原点のようなお話といえます。

通信制高校が克服する DISTANCE

DISTANCEとは、ここでは学ぶ人と学びの場の距離・隔たり、ととらえることができます。宣長と真淵の場合は物理的距離そのものでした。

  現代の日本では、各地に学校が整備され交通網も発達しているので、あまり問題にならないかもしれません。しかし、たとえば中央アジアで家畜を追いながら、パオとかゲルとか呼ばれるテントで移動しつつ、遊牧を営む家族の子弟が学校に通うのは、やはり物理的距離の問題から容易なことではありません。インターネットの発達もあり通信教育は、こうした人々の学業の支えにもなると考えられています。
 NHK学園高等学校が開校した1963年ころのDISTANCEは、学ぶ人の経験した生活環境・経済環境・健康上の問題が原因で生まれたものが大半でした。
 その後見られるようになった「不登校・引きこもり」は、大雑把に言えば「円満ではない人間関係や心の壁が形成した学校との距離感」でした。
 通信制の教育は、さまざまな形の障害としてのDISTANCEを超越し、『いつでも、どこでも、だれでも』学ぶことができる社会の実現に貢献しているのです。

学ぶ人が選択した DISTANCE― 通信制高校 新時代の到来

これまで述べてきた教育におけるDISTANCE(距離・隔たり)は、学ぶ人が強いられる外的要因(学ぶことへの障害)の側面が強いものでした。

  ところが近年、N学に入学される生徒さんを見ていると、全く異なる現象も目に付くようになってきました。DISTANCEを通信制高校のメリット(!)としてとらえ、活用しようという人々です。
 通信制高校は、自学自習を前提に登校日数を少なく設定しています。N学の場合は、「NHK高校講座」を視聴することでさらに少なくなっています。これは、生徒さんが自由に運用できる時間が大きいことを意味しています。そのこと自体はN学の設立以来、状況はあまり変わっていません。
 ただ、かつてはその時間は仕事やアルバイトで占められることが大半でしたが、このところ自分の特技をみがくことに費やす人が急速に増えています。バレエ、オートバイレーサー、サッカー、アイスホッケー、囲碁…。若い時から修業を始め、エキスパートを目ざす人が通信制高校を選択しているのです。海外留学しながら、N学のネット学習海外コースに籍を置いて日本の高卒資格を目ざす生徒さんも少なくありません。
 時代の変化に合わせ、通信制高校としてのN学のあり方も進化しています。