「目標とどう向き合う?」を考えるオンライン特別活動
- 全国
2024.10.02
元オリンピック選手 為末大さんが登場
NHK学園ではオンライン特別活動「Inspire High(=インスパイア・ハイ)」を定期的に開催しています。この活動はさまざまな立場・職業・専門分野を持つ人のインタビューを聞き、チャットなどを通じて、他の生徒の意見や考え方を知り、自分について、生き方について、そして社会が抱える問題について、より深く考えるオンライン特別講座です。毎回200人、300人という生徒が参加しています。昨年2023年度は全6回開催。今年度2024年度も6回開催が発表されています。「対面ではなかなか自分の意見を言葉にすることが苦手でも、オンラインだからこそ素直な意見がいえる」「どこからでも参加できるので気軽」といった声も多くあります。
7月26日(金)に行われた今年度第2回目のテーマは「目標とどう向き合う?」元オリンピック陸上選手の為末大さんのインタビューを視聴し、テーマについて皆で考え意見を共有しました。
為末大さんは400メートルハードルという陸上種目の日本の第一人者で、3回連続オリンピック出場経験を持ち、世界陸上大会では2回連続銅メダルを獲得しています。この種目の日本記録保持者でもあり、この記録は20年以上たった今でも破られていません。陸上競技を通じどのように目標を設定し、オリンピック出場という夢を叶えるために、自分のたてた目標とどう向き合ってきたのか、為末さんのお話を聞きながら、「目標」について一緒に考えました。

今回のMC 岩渕先生と元吉先生
まず、為末さんのインタビューを視聴する前に、書き込む練習をかねて投票タイム。「自分にとって目標はあった方がいい?ない方がいい?」というMCからの問いに参加者に投票してもらいました。投票やアンケートの結果は即時グラフで共有されます。この問いに対して圧倒的に「目標はあった方がいい」を選択した生徒が多数でした。「目指す目標が明確な方がやる気がでる」という声もある一方、「高い目標設定をしすぎて苦しくなることもある」という意見もありました。具体的な目標があるとゴールがわかりやすい・目指しやすい場合もありますが、今回は全員で「目標を作ろう!」という方向性に意見を固めるのではなく、目標というものについて、ゆるやかに考えていく時間にしたいと、MC岩渕先生の言葉で始まりました。
為末さんのインタビュー視聴
為末さんは小さいころから足が速く、中学生の時に複数の種目で全国一位になりました。漠然とその頃から「オリンピックにでる」という夢を持ち始めたそうです。中学生の時の陸上部の顧問の先生は、まずは部員(選手)に自分で目標をたてさせ、その目標を叶えるためにどういう練習をしたらよいのかということを考えることから始める方針でした。それで入部してまずグラウンドで練習する前に部室で一週間、「自分はこの種目でこういう記録をだしたい」「その目標を達成するためにはどういう練習をしたらよいか?」と繰り返し先生とやり取りしながら目標について考えたそうです。自分と向き合い決めたその目標をもとに、日々練習していったことで、記録も伸び、日本一という結果に結びつきました。先生や誰かに決められるのではなく自分で目標を立てるということは、とても大切なことですね。
目標との向き合い方
順調に進んでいる時はよいのですが、スランプなどどうしても思い通りにならない時期もあります。その時にあまり先の事を考えすぎず、目の前の小さなことを積み重ね、なにより「楽しむ」気持ちを大切にすることが大事と、為末さんは語っていました。目標の立て方としては「小さな目標をたてる」叶いやすい具体的な数字や設定を少しずつ積み重ねてゴールに近づいていくことが、コツのようです。
為末さんがオリンピック選手15人ほどに、目標の立て方についてインタビューをした時のお話をしてくださいました。
ほとんどの選手がやっていたことは「小さな目標を繰り返す」こと。グラウンドに出る前に「今日はこれをやれるようにしよう」と、小さな目標に対して繰り返すことです。
今日はこんなの目標をたててみたがどうなったかな→できたかな、できなかったかな→できなかったとしたら何でだろう。どうすればできるようになるだろう。→明日の朝起きたら、よし今日はどういうことを目標にしようかな。
こういう風に続けることはプレッシャーもないし、面白がってできるので、小さなくるくる回る目標を大事にしてほしいと、為末さんは感じたそうです。

夢と目標の違い
では、「夢」と「目標」はどう違うのでしょうか。為末さんは「夢は方向で、目標は距離」と表現しました。夢は簡単にいうと数字がいらないものです。例えばオリンピックにいきたいという夢は全部方向。金メダルをとりたいという具体的な数字などが入ると目標。目標は期限をつけ「いついつまでに〇〇をする」という設定があるということです。
最初はとにかく具体的で達成可能なもの、これを目標にしていくことが、とても大事だと為末さんは教えてくださいました。
インタビュー視聴のあと、まずは参加者に「やりたいこと、がんばってみたいことはなんですか?」というMCからの問いに、思い思いに画面に書き込んでもらいました。叶う可能性のあるなしではなく、まず今思っていることを自由に書き込んでもらいました。大きな夢から日常的・具体的なことまで、皆の興味のあることはさまざま。チャットに書き込まれていくコメントを、MCが読み上げながら、共有していきます。
次にふくらませた「やりたいこと」を、具体的な小さな目標にしていくことを考えてもらい、さらに書き込んでもらいました。
①やりたいと思っていること
②どうしてそれをやりたいか
③それをやるために、何をしたらよいか
皆が考えやすいように、意見を書き込みやすいように、MC先生や、裏方先生(天の声)たちも、自分自身の目標を具体的に話してくれました。積極的に書き込まれた内容を共有することで、自分と似たような目標を考えている生徒同士が、お互いの意見を知ることができ、共感できたと思います。
このインスパイア・ハイも回を積み重ねるごとに生徒がどんどん慣れてきて、アンケートやフォームズ、チャットへの書き込みなども積極的に参加してくれるようになりました。速く書き込める生徒もいますが、じっくり考えて書き込む生徒もいてスピードはさまざまです。周囲を気にせず、それぞれのペースで参加できるのも、オンライン特別活動のよいところのひとつかもしれません。
今回も270名もの生徒が、一緒に一つのテーマについて考え、意見を共有する機会を持ちました。今日思い浮かんだこと、すでに取り組んでいること、興味はあるけど迷っていること・・・それぞれの心に浮かんだ目標は、今すぐにではなくても、自分の中に生まれた種として、いつか育ち花開いていくかもしれません。すでにスタートしたり、今夜から早速はじめることのできる目標もありますが、今日はまず、目標について自分が考えるきっかけの時間になったならば嬉しいと、MCの言葉で締めくくられました。
9月のリアル・オンラインを考える回をはじめ、今年度はさまざまなプログラムが予定されています。
〇広島の平和活動家と考える「戦争のない未来をどうつくる?」
〇広場恐怖症の写真家と考える「“弱さ”とどう向きあう?」
〇ロボット開発者#要と考える テクノロジーは人を幸せにする?」
MCや天の声、先生たちのお話も毎回楽しく、普段の授業で接している姿とはまた違った一面がみれたり?、時には経験談など聞くことができる回もありました。一緒の時間を共有することで、先生により親近感を感じていただけることも、この活動の魅力のひとつだと思います。これからのインスパイア・ハイもお楽しみに。