尾木直樹さんの講演会を開催しました!
- 全国
2023.11.05
講演テーマは「ミライを生き抜く」

10月6日(金)東京本校でNHK学園アドバイザーの“尾木ママ”こと、尾木直樹さんのN学特別講座が行われました。
登校・スタンダード・ライフデザインの各コース生徒149名。生徒の保護者と入学検討者が55名。合わせて200名を超えるたくさんの参加者が集まり、体育館が狭く感じるほどの大盛況ぶり。また同時にオンライン配信をおこない、生徒と保護者が全国で視聴参加しました。

司会役の生徒による紹介のあと、大きな拍手の中、登壇した尾木ママ。にこやかな笑顔と優しい口調で、会場とオンライン参加の方のためにカメラに向けて呼びかけました。
「ミライがみえない、大人もアドバイスするのが難しい時代ともいえる今、どのように進んでいくべきか、みなさん一緒に考えましょう!」尾木ママの言葉で講演会スタートです。
今、みなさんを取り巻く環境
以前は「〇〇になりたいなら△△へ進学する」というように、道筋が明確で段取りよく進むことができました。
今、時代は大きく変化しています。
●賃金の上がらない日本を出て、若者が海外へ出稼ぎに出て行ってしまう時代。この傾向は、コロナ禍でより進行しています。
●地球温暖化による食料危機と低い日本の食料自給率の不安。日本の食料自給率は今や38%です。今年は歴史的猛暑で作物が育ちませんでした。日本のみならず、どの国も同じ状況です。外国から食料を輸入できない場合、私たちの食料はどうなるのでしょうか。
●ロシアのウクライナ侵攻。過去の話ではなく、今現在起きている戦争をネット上で目撃する時代です。
●SNSの広がりが生み出した新たな問題も発生しています。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、今年7月、生徒の学校でのスマートフォンの使用を禁止するよう呼びかけ、スマートフォンが学習活動を妨げる可能性があると警告しました。
日本は子どものスマートフォン使用に関する規制が最も緩い国です。フランス、オランダ、スペイン、オーストラリア…どこの国でも、今、いじめの大半はスマートフォン経由です。
こうした今起こっている問題を提示したうえで、尾木ママから、参加者へ質問が出されました。
「SNSの問題を扱うのは、NHKだけ。民法では、全く報じられません。なぜだかわかりますか?」
生徒たちからは、頭をひねりながらさまざまな答えが出されました。
「それはね、テレビ局にとって最大のスポンサーはスマホの会社だから。」と、尾木ママがそのからくりを教えてくれました。
私たちの接する情報は知らないうちに制御されているという事実に生徒たちは驚いた様子でした。
尾木ママがタイでの視察で感じたこと
続いて、JICA(国際協力機構)の仕事で、中学生、高校生、大学生とタイへいらした際のお話に…。
タイの学校はどこも中高一貫校。以前から「高校入試反対!」と言っている尾木ママ。改めて、思春期の真っただ中に高校入試を行うことのマイナス面を話してくれました。
※ちなみに、NHK学園高等学校の入学選考は出願書類と面接のみ(※登校コースは作文も)により行っています。中学生のみなさんに、過度な負担のない選考だと自負しています。
また、タイの視察で出会ったスラム街出身の外交官について紹介してくれました。
タイ最大のスラム街出身のその方は、とても貧しい環境にありながらも、移動図書館の蔵書6000冊をすべて読破し知識を身につけた人物。現在は外交官として、国を代表して活躍しているその姿に、改めて「学ぶことの大事さ」を感じたそうです。学ぶこと…特に「読書」は世界が無限に広がり、夢の実現につながること、生きているうえで、“学ぶ”ということが、人間の可能性を引き出すと語りました。そしていつも目は世界に向けておいてグローバルな生き方をしてほしいとも話されました。
「人間力」がカギ
今年はChatGPTを始めとした生成AIの話題に注目が集まった年でもありました。教育界でも、「どのように生成AIとつきあっていくのか」が大きな議論を呼びました。
インターネット、SNS、生成AIなどが世の中に台頭してきて便利な部分もある反面、問題点も出てきています。ただし、問題があると言って全てを否定したり、生成AIが出した答えをまるごと引用するのではなく、正しく使う工夫をすることで、効率や利便性があがるのも事実です。尾木ママからは「最新のテクノロジーをうまく使いこなす力が『人間力』。今後教育の現場で、これらの情報をどのように『うまく使いこなしていくか』を教えていくべき」というお話がありました。
人間はIQ(=知能)では、AIにはかないません。だからこそHQ、つまり人間力・人間性が重要になってくるのです。AIが持っていないもの、人間だけがもっているのは「想像力」「感情」「思考力」「情念」や「情動」です。音楽や美術による表現などに凝縮される「伝えたい!」という心の底からわきあがるマグマのような思いこそ人間ならではのものです。こうした思いを豊かにしていくことが人間力を高めます。では、人間力を豊かに育むため、何を大事にすればいいのでしょうか?
それは、
●自分の好きなことにこだわること
●好きを大事にすること
だと尾木ママは教えてくれました。
直接的につながらなくても、例えば、好きなこととはまったく関わりのない進路や職業を選んだとしても、好きなものにこだわる生き方をすることは、幸せな生き方へつながります。そして、命とむきあうこと。動物や植物を育てたり命とかかわることは自信や成長につながるので、ぜひ大事にしてほしいですと、お話を締めくくりました。
尾木ママから悩んでいるみなさんへ
講演の最後は質疑応答の時間です。事前に集めた質問、オンライン配信でのチャット質問、会場での質問…。尾木ママは、ひとつひとつていねいに答えてくれました。
「どのように子どもの成長を見守ったらよいでしょうか」
という保護者の悩みには「自己決定」つまり自分で自分のことを決めていくことが大事だと教えてくれました。保護者は子どもに判断の材料となる情報を提供しても、決定はしない。自分で決めさせることが重要だと伝えてくれました。
「子どもがすぐにあきらめてしまう。どうしたらよいでしょうか」
という悩みについては「目的と目標を区別することが大切」というアドバイスをくれました。目的がなにもないとあきらめやすくなってしまうもの。大リーガーの大谷選手の例など具体的に挙げながら、まずは大きな目的をもつことが大切で、その目的達成に向けてのステップとしてさまざまな目標ができてくるものだと教えてくれました。そうした目標を積み重ねていくことで、あきらめずに目的に向かっていきやすくなりますよ、と語ってくれました。
もうひとつ大事なことは、他人との比較をしないこと。評価や成績は他人との比較ではなく、その人自身の過去との比較をするべきもの。他者からどうみられるか、どう認められるか気にしがちですが、「1年前の過去の自分より成長できたているかどうか」こそが大切です。核は自分。自分の好きなことを大切にしてほしい、と生徒たちに語りかけました。
「子どもの自主性を伸ばすのに、親があえてしない方がよいことは何ですか」
という質問に対しては、「口出しをしないこと」ときっぱり。高校生になったら、もう大人扱いをして、対等な立場として話をすること。指示を出すのではなく、「あなたはどうしたいの?どうするの?」と自分で決断していくことにつなげることが大事です、と話してくれました。
「こどもファースト」という考え方はもう古く、現代の考え方の主流は「子どもセンター」。子どもを真ん中にして、学校や保護者、地域が見守って育んでいく社会が望ましい。最後にそんなメッセージを伝えて、本日の講演会は終了です。
ステージを所狭しと動き回り、時には舞台から降りて、自らマイクを向けて参加者の言葉を引き出す講演内容に会場も一体化。
あっという間の90分。終始にこやかな笑顔でありながら、将来をになう子どもたちのミライについての尾木ママの熱弁に、マグマのようにたぎる熱い情熱をひしひしと感じました!
尾木ママが話してくれた数々の「種」が、参加者一人一人の心の中で芽吹き、ひとつでもふたつでもミライに向かって花開かせてもらえたとしたら、今回の特別講座も大成功です。
「テレビでいつもみている“本物の尾木ママ”に会えた!」と、講演会終了後の放課後、校舎に残っていた、幾人もの生徒から、喜びの声が聞かれました。

熱弁をふるう尾木さん

時には壇上から降りて参加者にマイクを向けて

会場に、カメラの向こうに熱く語りかけます