史上初!ブラックホール撮影に成功 本間希樹先生 N学へ! その1
- 東京本校
2020.10.23
地球サイズの望遠鏡でブラックホール撮影に成功!!
NHK学園高校では、1年に数回、「N学特別講座」を開催しています。各分野の第一線で活躍されている、まさに今が「旬」の研究者や文化人の方にお越しいただき、専門分野の分かりやすい解説や学ぶことの意味について語っていただく機会です。
10月23日(金)、NHK学園東京本校の体育館で「N学特別講座」が行われました。
講師は、天文学者で国立天文台水沢VLBI(超長基線電波干渉計)観測所所長・教授の本間希樹(ほんま・まれき)さんです。電波天文学が専門で、銀河系構造やブラックホールの研究を続けてこられました。
本間さんたちは、去年、ブラックホールの姿を史上初めて写真撮影しました。ブラックホールとは、強い重力のため光さえ脱出できない暗黒の天体です。存在は知られていましたが、だれも見たことがありませんでした。どうやって撮影に成功したのでしょう?
当日は登校コース、ネット学習コース、ベーシックコースの生徒や保護者、一般の方合わせて120人以上が参加しました。
本間さんはまず、岩手県奥州市水沢が、実はたいへん歴史のある天文学研究の場所であることを教えてくれました。今から120年も前に地球の極軸の動きを解明するために、世界の同一緯度(北緯39度8分)に6か所の天体観測所が造られました。その一つが水沢だったのです。
そもそもブラックホールって、聞いたことはあるけど、いったいどんなものなんでしょう。
本間さんによれば「重力が強く光さえ脱出できない、暗黒の天体。宇宙の中で明らかにいちばんおかしな天体」だということです。巨大ブラックホールは宇宙のあちこちにゴロゴロあるそうです。重さは太陽の400万倍もあるといいます。
本間さんは、史上初めてブラックホールを写真にとらえた画期的な方法について分かりやすく説明してくれました。
世界8か所にある大きな望遠鏡を組み合わせて、なんと!地球サイズの望遠鏡を作ります。望遠鏡を同期させ、地球の自転を利用することで、地球サイズの望遠鏡が可能になるそうです。これを、「イベントホライズンテレスコープ(EHT)」といいます。
人間の視力は1とか1.5とかありますが、この望遠鏡を人間の視力で表すと、なんと300万!にもなるそうです。地球から月面に置いたゴルフボールが見えるほどの性能です。
この地球サイズの望遠鏡を使って、おとめ座の銀河M87の中心に位置する巨大ブラックホールを撮影したのです。
日本チームが担当したのは、ブラックホールの画像解析でした。最終画像をどれにするか、各国と激しい議論の末、最終的には平均的な画像を採用することになりました。ブラックホールは、とてつもない高密度で、地球の重さを持ったまま、ビー玉ぐらいになるとブラックホールができるということです。
本間さんは生徒に語りかけます。画像に映るドーナツの穴のよう部分がブラックホールの影(ブラックホールシャドウ)とよばれるものです。なぜブラックホールの影ができるのでしょう。それはブラックホールの重力によって光が曲げられたり捕まえられたりするからです。
従来はブラックホールに吸い込まれるガスが高温となって輝いている映像しか撮影できませんでした。今回は、明るいリングの中に暗い部分が写し出されました。これこそがブラックホールの影であることが、理論の予想との比較などから確認できたのです。
本間先生のお話は、さらにブラックホールの正体に迫っていきます。
続きは後半でご紹介します!
講演する本間先生
国立天文台水沢の様子。中央右が直径20mの電波望遠鏡
史上初めて撮影に成功したM87銀河の中心にある巨大ブラックホール
熱心に聞き入る生徒