卒業生・神田直樹さん 東大受験で身につけた自学法を伝えたい
2023.07.12
スタンダードコース卒業後、東大へ進学し、この春起業
神田直樹さんは、NHK学園スタンダードコースを卒業後、東京大学に進学。2023年3月に教育についての問題解決のため起業しました。
今や、同じ教育に携わる仲間になった神田さんに、在学時の話、大学での経験、そして目指していることについてお話をうかがいました。
東大受験のためにNHK学園への入学を選択
――神田さんは海外生として入学されたとうかがいました。どちらにお住まいだったのですか。
神田さん:東日本大震災の時に、父が仕事で頻繁に訪れていたミュンヘンに一時的に住むことになったのです。一時的のつもりが、居心地がよくてそのまま何年にもわたり、中学はミュンヘンの日本人学校へ通っていました。
実は、この日本人学校が、日本の学校以上に日本的で、僕が東大受験のために通信制高校へ進学すると告げると、先生の多くが反対したり、考え直すように言ってきたりしました。
――NHK学園を進学先として選んだ理由を教えてください。
神田さん:中学校3年生のときに、東京大学をめざそうと決意しました。受験のためには、通信制高校に進学するのが一番だと考えて、調べた結果、海外からも入学できること、帰国の頻度、学習スタイルなどNHK学園が最も条件が合っていると思って決めました。
――他校と比較検討はしなかったのですか。
神田さん:両親はしていたと思いますが、「NHK学園がいい」という僕の選択がやはり最も合理的だと納得してくれていました。
――入学してみて、いかがでしたか。
神田さん:帰国時期の関係で、海外生のスクーリングではないスクーリングに参加したのですが、本当にいろいろな人がいました。不登校だった人、プロスポーツ選手、ミュージシャンなど何かを究めようとしている人、30代~40代の方もいて、NHK学園にいる理由も年齢もさまざま。他者に対して強制や否定がないのが、とても新鮮でした。
浪人を経て2番目の成績で東大合格!
――平行して、東京大学受験のための勉強をされていたのですね。
神田さん:はい。高3の時には、毎日10時間以上勉強していました。参考書や過去問を使って自分なりの学習メソッドに従って計画を立て、勉強していました。目指していた文科一類へのトップ合格を目標に、自分としては、万全を期して臨んだのですが、最初の受験の結果は不合格でした。僕としては、計画が失敗に終わった初の体験です。来年もう一度挑戦するのに迷いはありませんでしたので、何がいけなかったのかを徹底的に見直しました。その中で、自分が独善的な部分が見えてきました。結果としては、この2回目の受験に向けた1年間が、客観的に自分を見つめる大きな機会になりました。
――その結果、2回目の受験で、みごと東京大学に合格しました。
神田さん:はい。トップ合格は惜しくも逃しましたが、二次試験は2番目の成績で合格することができました。
東大・非進学校出身生サークルでの活動
――東京大学では、どのような学生時代を過ごしましたか。
神田さん:UTFR(University of Tokyo Frontier Runners)という非進学校出身の学生で作ったサークルに参加していました。入った当時は目立った活動はしてなかったのですが、ちょうど学園祭で自分たちでまとめた合格体験記を冊子にまとめて販売する 話が持ち上がって、執筆に参加。1200部も売れました。それぞれ前例のほぼない ところで東大を目指して努力してきたメンバーです。辛い経験もたくさんしたので、それを前例として示して役立ててほしいという思いをみんな持っていたので、書いてみたら、とても気持ちがよかったんです(笑)。これは、のちに小学館から書籍化されました。
――実は、今年、神田さんの後輩となる東大入学者が出たんですよ。
神田さん:はい。彼も同じサークルに入っているので、知っています。
――すごいネットワークですね(笑)。
――ほかにも、石垣島や高知県に赴いて、中高生と話をする活動を行っているとか。詳しく聞かせていただけますか。
神田さん:石垣島へは知人がいたこともあって中学生と対話をしたり質問に答えたり、保護者向けに講演会を開催したりしました。みんな進学と同時に島を離れてしまうので、そもそも大学生が身近にいない。自分が進学を目指しても周囲の理解を得られない子もいます。サークルのメンバー10人ぐらいで年に2回の訪問を中心に、年5回ほど 訪問して、市民権を得てきました。実際に、東大ではないけれど東京の大学に進学した子も出ました。
――石垣島での活動がきっかけで高知県での取り組みも始まったのですか。
神田さん:石垣島での活動を教育新聞に寄稿したりしていたので、世に知れるようになったのではないかと思います。高知県の教育委員会 から高校進学コースの子たちに話をしてほしい、というお話をいただきました。内陸の山間の地域や県の最南端の地域などを訪問しましたが、場所によっては、東京からの移動時間は10時間。石垣島のほうが距離的には遠いものの移動時間としては近い んです。地域によっては、地域の人以外の人と出会う機会がなく、大学や大学生活というのを思い描きにくいところがあるかもしれません。
中学入学、高校入学のタイミングで出て行ってしまうケースもありますが、年齢の低いうちに土地を離れてしまうと愛着も育まれないまま離れてしまうことになります。高校生まで土地に留まった子たちは、大学進学で土地を出ていく場合も、土地への愛着や思い持って離れている。だから、卒業後、もしくはそのもっと先に物理的に戻ってきたり、違う形でも郷里を大事に思ってくれたり、ということが期待できるというわけです。
――なるほど。訪問する中で、その土地ならではの状況を肌身で感じてきたわけですね。
「自分の学園を作りたい」という夢に向けて起業
――東京大学卒業後は、就職して企業で1年間働いたのちに起業しました。
神田さん:はい。東大受験のために勉強していたときに、「自分の学園を作りたい」という夢を持ちました。これは、20年後、30年度に実現させる長期計画ですが、やはり自分のやりたいことは「教育」。自分のやりたいことでないとパフォーマンスが上がらないので、大きな夢に向けて、教育の分野でやっていこうと決めました。
始めたのは、勉強そのものを指導するのではなく、勉強方法、そして学習の習慣化のための指導です。「3か月で終える」というのがウリで、自学自習ができるように自立を目的とした指導です。→神田さんの会社の公式サイトはこちら
――「自学自習」はNHK学園の学習においても大きなキーワードです。
神田さん:はい。僕自身、東大受験の際に独学という方法を選んだのは、そのほうが早く学ぶことができて効率がいいからです。集団での学習は、動機付けなど他の効果はあるかもしれませんが、効率という点では独学には明らかに劣ります。
学校での学びで社会性は身につく?
――一般的には、社会性を学ぶところに学校において集団で学ぶ意義があるとも言われます。
神田さん:僕は、「社会性」はバランスを取るものだと思っています。ひとりの人間の中にも「他者とのかかわりの中で育むべきとき」と「ひとりで自分に向き合うべきとき」とが あって、全体としてバランスが取れている。
「社会性」は「他者と向き合う」ということだと思うのですが、自分に向き合えていないと他者と向き合えないですよね。自分がない中で他者と交わっても、それは社会性を学ぶことにはつながらないのではないでしょうか。そもそも自分に向き合えていない人が多いと感じます。
そういう意味では、NHK学園で出会った人たちは、自分と向き合っている人が多かったと感じます。
――そうですね。NHK学園ならスクーリングでも「自分のペースでいられるので安心。」という生徒はいます。先ほどの神田さんの表現を借りれば、そういう生徒は「ひとりで自分に向き合うべきとき」にあるのかもしれません。そして、自分の場合はこうだからということを知っているからこそ、相手に対してどこまで関わっていいか、許容範囲もよくわかっていて、それはコミュニケーション力そのものでもあります。
通信制高校への進学を考える生徒やその保護者にとっても、ご自身の体験に基づいたとても貴重な意見を聞かせていただきました。
神田さん:今日は自分の原点でもあるNHK学園時代を思い出し、素敵な気持ちになりました。教育の分野に身を置くことになった今、NHK学園のために何かお手伝いできることがあれば…と思っています。卒業生だからこそわかる、NHK学園の生徒が求めているようなサポートができたら、とてもうれしいです。
神田さん、ありがとうございました。
神田さんにはNHK学園生のために毎年開催している「合同進路説明会」で受験に向けた学習法についての講演や受験勉強についての相談対応をしていただきました!
ありがとうございました。
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