夢は国内・海外での活躍。馬術競技の道を志し学業との両立

  • さまざまな生き方・学び方

2024.04.25

スタンダードコース 海江田 珠詩さん

海江田さんは、NHK学園大阪夕陽丘学園協力校スタンダードコースの2年次生。乗馬クラブで正社員として働きながら、高校卒業資格取得を目指しています。馬術の道を志したいきさつや、夢と学業との両立などについて聞きました。

ーー私たちが乗馬というと、たずなをひいてもらいながら馬に乗ってゆっくり歩くイメージですが、競技となると異なりますよね。海江田さんが目指している「馬術」はどのようなものか教えてください。

海江田さん:馬術競技は乗馬のスポーツ競技で、オリンピックでは男性と女性が同じステージで戦う唯一の競技です。大きく分けて3つの競技種類があります。1つ目が障害馬術。例えるなら馬のハードル競争・障害物競争で、いかに早いタイムで障害物を落とさないように、より正確に美しく飛び越えるかを競います。ダイナミックなジャンプをするのが特徴です。2つ目が馬場馬術。例えるなら馬のフィギュアスケートで、いかに正確に既定の技を披露することができるかを競います。服装も特徴的です。3つ目が総合馬術。例えるなら馬のトライアスロンです。障害物を飛び越えタイムを競う障害飛越、演技の正確さを競う馬場馬術と、馬の能力を最大限に引き出すクロスカントリーで得点を競う競技です。最大時速30kmで馬が全力疾走するクロスカントリー種目が特徴です。その他にも、馬のマラソンともいえるエンデュランスをはじめ、いくつか種目があります。私が目指している競技は障害馬術です。さまざまな色や形の障害物を、決められた順番通りに飛び越えて、走行して、その点数やタイムを競います。選手は鞭や肢を使って馬に合図を送って、ジャンプの踏切るタイミングや角度、走る速度などを細かく指示します。障害物の高さによってグレードが6つに分かれています。障害は人間の背の高さぐらいまであり、奥行きが200cmを超えるものもあります。

 

ーー現在は働きながら、NHK学園の勉強と両立されているとお聞きしました。

海江田さん:大阪にある乗馬クラブの正社員として、馬の世話をしたり、会員の方が乗馬する際のお手伝いをしたり、コーチたちのサポートをするなどして働いています。仕事の空き時間に、自分自身が乗馬のレッスンを受け、仕事以外の時間でNHK学園の勉強をしている毎日です。

 

ーー なぜ、馬術の道を志したのか、馬の世界へと進みはじめたきっかけについて教えてください。

海江田さん:もともと動物は好きでしたが、幼少の頃から10年間うちこんでいたのはダンスで、馬とはまったく無縁の生活でした。中学2年生の時、ダンスを続けるかも含めて進路について悩んでいた時期、受験勉強の気分転換もかねて、家族で牧場に行き、生まれてはじめて乗馬体験をしました。「楽しい!!!」その時にうけた衝撃と感動を今でも覚えています。その体験がきっかけで、馬の魅力にどっぷりハマってしまいました。乗馬をしたくて、部活で乗馬ができる地元の強豪校を進学先に選び入学したのですが、上の学年の先輩たちが卒業してしまい、入学した年の部員が自分一人だけという状況で、入部はしたものの現実には思うように活動もできない状態でした。

 

ーー乗馬をしたくて進学したのに活動ができないのは、苦しい状況でしたね。その後どうされたのですか。

海江田さん:1年の1学期は通学しましたが状況は変化せず、このまま在籍していても馬術部としての活動は見込めず悩みました。どうしても乗馬を続けたいという気持ちが強く、あきらめられなかったので、家族とよく話しあい、結果として最初に入学した学校を退学しました。その後、大阪の乗馬クラブで働きながら、馬術競技の練習もさせていただけることになり、その道へ進むことを決断したんです。その決断を家族は一番応援してくれていますが、馬術の道に進む条件として、両親と約束したことがひとつ。「高校卒業資格を取得すること」です。現在の勤め先でもある乗馬クラブのオーナーが、働きながら学べるNHK学園を勧めてくださったことが縁で、通信制高校の存在を知り、高校卒業資格を目指すため、NHK学園への入学を決めました。

 

ーー働きながら学業と両立するのは、時間の管理が大変ですね。1日の過ごし方を教えていただけますか。

海江田さん:所属している乗馬クラブにはだいたい常時15頭ほどの馬がいます。早朝に起床してすぐに馬の食事の世話のために、馬房(馬たちの部屋)にいきます。馬たちへ食事を用意し、馬たちが食事している間に、自分も急いで朝食をすませ、そのあと馬房から移動させて、馬たちが運動している間に馬房の掃除をし、床をきれいにしたり、馬の布団になる藁を整えるんです。会員さんたちが乗馬をするために馬に鞍や鐙を装着したり、コーチがすみやかに指導を始められるよう整える仕事や、片付けなど、さまざまなことがあります。日によって時間は前後しますが、空いている時間帯に、自分も乗馬し、コーチに馬術レッスンを受けさせてもらいます。限られた時間ですが、それが一日の中で自分にとってとても重要な時間です。馬たちの夜の食事の世話を終えてから自分の夕食をとり、大体自由時間になるのが夜20時や21時頃です。それから入浴したり、掃除洗濯などすませたあとようやく勉強の時間になります。これが平日の主なスケジュールです。4月からは社員寮をでて生活をはじめたため、自宅とクラブの往復時間や、朝食や昼食お弁当づくりもあり、さらに早起きになりました。勉強に充てられる時間は就寝前のわずかな時間ですが、それでも高校は3年間で卒業すると決めているので、なんとか課題をこなして続けています。

 

レッスンする海江田さん そのまなざしは真剣そのもの

レッスンする海江田さん そのまなざしは真剣そのもの

ーーNHK学園で過ごしている中で、印象的な出来事、学校生活で楽しんでいることがあれば教えてください。

海江田さん:1年次の1番の思い出はなんといっても体育祭です。通信制高校で行事があると思っていなかったので、嬉しい驚きでした。身体を動かすことも大好きなのですが、普段スクーリングでは科目が違い会わない人や、違う学年の人とも一致団結し協力するのがめちゃめちゃ楽しかったです。大盛り上がりで、自分のグループが優勝しました。最初は働きながら勉強することを大変だと考えていたけれど、今では学校に行くのがすごく楽しみです。普段は先輩やお客様など目上の方に囲まれているので、同世代の友人とたわいもない話をしたりするのは、自分にとっても気分転換になります。去年は仕事と重なり行けなかったので、今年は遠足にも参加したいと楽しみにしています。

 

ーー海江田さんにとって、馬の魅力や、好きなところを教えてください。

海江田さん:走る姿がとても美しいと思います。走ったり、跳躍する時のしなやかな筋肉はすばらしくかっこよいです。かなり大きな動物ですが、目がとてもかわいいです。

 

ーー 乗馬中に、怖い思いをしたことはありますか。

海江田さん:練習中に落馬してケガをしたことがあります。治癒するまでかなり長い間、乗馬することができませんでした。一度怖くなってしまうと、もう乗馬することができなくなってしまうので恐怖心をのりこえるために、怖さとむきあって乗馬を続け、克服しました。一人では難しかったと思いますが、コーチがいろいろ考えてくれ一緒にむきあってくれたのが、大きかったと思います。

 

ーー 休日はどのように、過ごされているのですか。

海江田さん:今年から土日の2日間が休日になりました。土曜日は英会話の勉強をしたり、日曜は学校スクーリングや、ライセンス取得*に向けての勉強をしています。休日は将来に向けての準備と勉強にあてています。先生たちとまなびや大阪で将来に向けての相談をしますが、いろいろなことを親身に考えてくださるので心強いです。これもNHK学園に入ってよかったと思うことのひとつです。
*障害3級~1級など。実技試験・筆記試験がある。級によって出場できる大会が変わる。

 

ーー海江田さんが目指していること、そして将来の夢が決まっていたら教えてください。

海江田さん:まず国内の障害馬術大会にたくさん出場し、実績と経験をつみたいです。大会にでるためにはライセンスが必要なので、今はその資格取得のための勉強も続けています。高校を卒業するまで残り2年間で、なるべく多くの大会に出場し、よい成績を残し活躍することを目標にしています。そして、働きながら貯めているお金で、卒業後は海外に行きたいと考えています。できたらオーストラリアに留学し、海外でおこなわれる馬術の大会に出場し活躍したいです。そのために今から英会話を習っています。

 

ーーずっと海外を拠点にしたいと考えていますか

海江田さん:しばらくはオーストラリアで障害馬術の大会出場を重ねて、海外でも活躍できる選手になりたいです。ただ将来的には日本に帰国し、海外での経験を生かして、例えばインストラクターなど、馬術競技の選手育成指導に携わったり、日本にもっと馬の魅力を広めることを仕事にできたらと考えています。

 

海江田さん、ありがとうございました。残りの学校生活も楽しみながら、夢を叶えて馬術の道で活躍をされることを、心から応援しています。

NHK学園は通信制高校の中でも、「NHK高校講座」を視聴をしたり、オリジナルのネット学習システム上で学習に取り組んだり、と自宅でのネット学習が充実しているため、最小限の登校で学習を進めることができる学校です。やりたいことや夢のために時間を使いたい方、働きながら勉強と両立したい方も、自分のペースで学習することができます。