自宅から出ることも難しい状態からAO入試で大学に進学。文章を書く仕事をするのが将来の夢。
- 通信制高校からの進学・就職
2023.10.08
Do itコース(現・ライフデザインコース)卒業生 吉田 望愛さん
吉田望愛さんはNHK学園ライフデザインコース(在籍当時はDo itコース)の卒業生です。心の不調から学校へ通うことが難しくなり、不登校経験者向けの特別カリキュラムで学べるNHK学園に入学しました。NHK学園の卒業後は、大正大学文学部人文学科に進学。現在4年生です。卒業論文の取材のために来校してくれた吉田さんにお話をうかがいました。
家の近くのコンビニにも行けない状態から
――NHK学園に入学当時の状況を教えてください。
吉田さん:中3の時から、心理的なことがきっかけで体調を崩しました。全日制の高校に進学したのですが、半年通学したところで休学し、翌年、NHK学園のDo itコース(現ライフデザインコース)に改めて入学しました。
――通信制高校に絞って転校先を探したのですか。
吉田さん:当時は家の近くのコンビニエンスストアにも行けない状態でしたので、母が探してくれました。1年次はほとんど家で勉強を進められるのでNHK学園に決めました。
2年次までは登校時に母が付き添ってくれました。でも、登校してすぐに保健室に行くこともありました。
――今お話をしていると、そんな時があったとは想像できません。
吉田さん:2年次の後半になると、徐々に体調が良くなってきました。体調不良の原因から距離を置いたこと、高校講座の視聴やネット授業が中心で学校に行くストレスがなくなったことが大きかったと思います。学校でも話をする子ができて、その子のつながりから交友関係が広がりました。当時の友人とは今でもLINE等でつながっています。
――ネット授業やホームルームはどんな感じでしたか。
吉田さん:1年次は緊張していて、先生の話を静かに聞いているという感じでしたが、慣れてくるとチャットでの書き込みが増えてきました。スクーリングで静かな子がチャット上では活発に発言するなど、テキスト上では人の印象が違うという発見がありました。
進路の決定、AO入試への挑戦
――進路については、どのように決めたのですか。
吉田さん:体調が良くなってきたとは言っても、3年次の時点では、就職は体力的に厳しいと感じていました。また毎日通うことにも不安があり、進学するとしても通信制の大学かな、と考えていたのですが、担任の先生との面談で大正大学のオープンキャンパスのことを教えてもらって、足を運んでみました。
オープンキャンパスの個別相談の場でお話した先生が「AO入試という選択肢があるよ」とおっしゃってくださったことで、気持ちが動きました。
お話を聞くまでは、部活動で積極的に何かに取り組んできたわけでも、受賞歴があるわけでもない私にはAO入試は対象外と思っていたのです。そこからは、10月半ばの出願締切に向けて、課題として課される小論文に向けて準備に没頭しました。
コロナ禍での大学生活
――その甲斐あって、無事に合格されたわけですね。入学して、約4年間を過ごして、いかがでしたか。
吉田さん:進学してよかったです。ただ、NHK学園を卒業して大学に入学したのが、2020年4月。コロナ禍の真っただ中でした。NHK学園の卒業式も、大学の入学式もなく、手探りでのオンライン指導の中での大学生活のスタートでした。2年目は対面授業が始まったものの、ゴールデンウィーク後は感染者拡大で再度オンライン指導に。3年生になって、ようやく対面での指導が日常になりました。
毎日通うのは中学生の時以来で、体力的に辛かったです。そして、黒板や講義室という学校空間に身を置くと、学校に通えなかった当時の精神状態が思い返されたこともあり、慣れるまでは保健室も利用しながらの登校でした。3年生の秋からは大分慣れました。
「通信制教育の可能性」が卒業論文のテーマ
――今回は、卒業論文のための取材の一環で東京本校の登校コースの説明会に見学にいらしていただいたのですよね。どんなテーマなのですか。
吉田さん:「通信制教育の可能性」がテーマです。
今回、論文のために、学生を対象に通信制高校のイメージについてアンケートを取りましたが、「学校生活を楽しめなさそう」「ちゃんと勉強ができなさそう」「治安が悪そう」など、ネガティブな印象を持っている人がたくさんいることがわかりました。これだけ通信制高校が進化しているのに、その実態がまだまだ知られていないと痛感しました。
コロナ禍で始まった大学生活。私自身は、NHK学園で長年の経験をもとに確立されたオンラインでの指導を受け、オンライン学習を3年間続けて来たので戸惑うことはなかったのですが、オンラインでの指導に慣れない大学の教授方はとても大変そうでした。今は対面での教育を再開していますが、今後も不測の事態で登校ができなくなるかもわかりません。そんな時でも二度と教育を止めないために、キャンパスでの指導だけではなく、オンラインでの指導も柱とした教育に移行していかなければならない、と感じています。そのために、全日制にも取り入れていける通信制の要素があることを伝えたいです。
将来は「文章を書く仕事」がしたい
――大学卒業後は、どうしたいと考えていますか。
吉田さん:大学生活を通して、文章を書くことが好きだと気が付きました。課題として論文を書くことも多いのですが、苦になりません。将来は、文章を書く仕事がしたいと考えています。とはいえ、体調面で無理のないように、卒業後はできる仕事をしながら経験を積んでいきたいと思います。そのために、今も、ブログ記事の執筆などのアルバイトをしています。
しんどいことも多かったけれど、考える時間をたくさん持てた
――ご自分の夢に向けて、体調と相談しながら、しっかり準備をされているのですね。最後に、NHK学園の後輩や入学を検討しているみなさんに、メッセージをお願いします。
吉田さん:私は、体調不良に悩むことなく、あのまま最初に入学した高校に通い続けていたら、「順当に行けばこう」という選択肢の積み重ねで全く違った人生を歩んでいたのではないかと思います。しんどいことも多かったけれど、そのおかげで考える時間をたくさん持つことができました。学生のうちにこうしたいろいろな経験ができてよかったです。
大学のAO入試の時に痛感したのは、結果より過程が大切ということです。みんな、それぞれにさまざまな経験をしていて、何も成長していないということはありません。結果を誇るよりも、その経験を語ることでどういう人なのかが伝わります。NHK学園を入学する人も、卒業していく人も自分のことを誇りに思って前に進んでほしいです。
吉田さん、力強いメッセージをありがとうございます!
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その後、吉田さんから大学卒業の報告をいただきました!
NHK学園にも取材に来てくれた「通信教育の可能性」の卒論で、学科で一人にしか与えられないAAの評価を得たとのこと。また、IT企業でwebコンテンツ制作部門のライターとして働き始めたとのことです。「文章を書く仕事に就きたい」という夢を早くも実現させましたね。体調に気をつけながら、楽しんで仕事を続けてください。応援しています!(2024年4月10日)