暮らしと言の葉(10)

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2023.03.02

「暮らしと言の葉」コラム第10弾です。アクティブで知的好奇心いっぱいの斎藤美衣さん。本好きな美衣さんが大好きな「読書会」のお話しです。

みなで読むということ

 読書会、というものがはじめはよくわからなかった。
大学生の頃、読書会に誘っていただいた。子どもの頃から本は好きだったけれど、本は一人で読むものだと思っていたので、同じ本をみんなで読み合うという行為がうまく想像できなかったのだ。せっかく誘ってもらったのに、風邪をひいてその読書会には結局参加できなかった。

 

 

 それから結婚して子どもが生まれて、読書会どころか、読書もままならなくなった。毎日保育園の送迎があったし、ご飯作りも洗濯も待ったなしなのだ。読書はいくらでも待ったができる。しかしある日ふと気づいた。あんなに好きだった本が読めなくなっている。集中して読めない。ドフトエフスキーもプルーストもまだ読んでいない。読まないまま死んでしまっていいのだろうか。

 

 生活の中に読書を取り戻したくて、やってみたのが読書会だ。読書会をやりますと言って仲間を誘うので、誘った本人であるわたしが読まないわけにはいかない。こうやってリハビリしながら、だんだん本が再び読めるようになった。本を読むのにもどうやら「読書筋」があるようだ。

 

 読書会は楽しい。そこでは仕事の話も、夫や子どもの話もしない。人は自分の人生を通してしか読めない。人生を通して本の話をする。それぞれの話を聞くよりもその人を強く感じられるのが読書会の楽しみなのだ。

 

 

もういちど生まれたくなる図書館の絵本コーナーゆっくり歩く

田村穂隆『湖(うみ)とファルセット』

 

 

 

斎藤美衣(さいとうみえ)

1976年広島県生まれ。
歌人/ベビー用品の会社経営
「コスモス短歌会」、「COCOONの会」に所属。
子どもの頃から、言葉と本が好き。
NHK学園の短歌講座も受講中。

休日は一人で本屋に出かけるのが至福の時間。