暮らしと言の葉(1)

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2022.08.16

オンライン短歌講座をご受講中の斎藤美衣さんによる、新しいコラムがスタートします。言葉と本が大好きな美衣さんが感じる、暮らしと言葉の関係について綴ってくださっています。どうぞお楽しみに。

コミュニケーションの形

 

人づきあいは難しい。わずらわしいところも多々あるし、一度にたくさんの人と会うとくたびれる。その一方で、一人きりだとつまらなくて、人と関わりたいと思ってしまう。

 

 

リアルに人と会うことが難しくなった二〇二〇年以降、わたしはいくつかの短歌のオンライン講座を受講している。これまでは所属している結社や同人グループのリアルな歌会や批評会に参加をするくらいだった。それがままならなくなった時、たまたまTwitterで見つけて申し込んだらハマってしまったのだ。

 

 

わたしの参加した講座の形態で多かったのが、前半に歌集や一つのテーマから抽出した作品の鑑賞や解説、後半は参加者が事前に提出した作品の歌会、というもの。

 

 

初めは(もちろん今も!)短歌の勉強のために参加したけれど、短歌というツールを通じてとるコミュニケーションは思いのほか心地よく、ふかい。短歌は自分の、そして世界の奥底にあるものを掬って提示するものなので、初めて会う人の大切な部分を共有してもらっているどきどきがある。その大切なところを話し合うのだけれど、あくまで話すのは言葉、作品のことなので、個人的にジャッジされない安心感もある。

 

同じ頃始めたオンラインの読書会も同じだ。話すのはあくまで本のことなのに、実は個人に最も深く触れる体験だ。このようなコミュニケーションのいろんな形が、暮らしも、自分の作品も、生きていくこともゆたかにしてくれる。

 

 

不完全なこころや体を持ち寄つて人ら暮らせる街を見下ろす

 

 

斎藤美衣(さいとうみえ)

1976年広島県生まれ。
歌人/ベビー用品の会社経営
「コスモス短歌会」、「COCOONの会」に所属。
子どもの頃から、言葉と本が好き。
NHK学園の短歌講座も受講中。

休日は一人で本屋に出かけるのが至福の時間。