暮らしと言の葉(6)

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2022.12.22

「暮らしと言の葉」コラム第6弾です。このたび、所属されているコスモス短歌会「第69回O先生賞」を受賞された美衣さん。おめでとうございます!これからのご活躍が益々楽しみです。今回はご子息の「サンタさん」への素敵なお手紙のお話しです。

 

 

サンタさんへの手紙

 仕事から帰ってきたら、リビングのクリスマスツリーの近くになにやら色画用紙が置かれている。覗き込んでみたら、九歳の末の子がサンタクロースに宛てて書いた手紙だった。

 「サンタさんへ」で始まる手紙は私信なので、あまり読んでは失礼かとじっくり読まなかったのだけれど、文末に「ぼくは今年もいい子でした」とあるのが目に入った。そうか、いい子だったのかと思って、その後さまざまな感情が湧いてきた。
わたしは今年「いい人」だっただろうか。わたしは今年どんな人であったろうか。

 わかりきったように思って普段使っている「いい(よい)」という言葉を改めて広辞苑で引いてみた。そういえば、翻訳家の岸本佐知子さんのお話を聞いた時に「中学一年で出てくるような簡単な単語こそ辞書を引く」とおっしゃっていた。「いい(よい)」には実にたくさんの意味があることに驚く。第一の意味は「物事が質的に他よりすぐれまさっている」とある。なるほど。五番目に出ていた「幸いである。吉である。運がよい。めでたい」という意味が気に入った。

「サンタさんへ。ぼくは今年も幸せでした」

この手紙はなんと幸福だろう。「わたしは今年幸いな人でした」と改めて思う。そして全ての人が大いなる何かに向かって「幸いだった」と思えるあたたかい感情を思い出し、抱いてあたたかく過ごせますようにと願う。

にんげんはほんたうはよいものでせう塩壺にまた塩を足したり
                                 斎藤 美衣

 

斎藤美衣(さいとうみえ)

1976年広島県生まれ。
歌人/ベビー用品の会社経営
「コスモス短歌会」、「COCOONの会」に所属。
子どもの頃から、言葉と本が好き。
NHK学園の短歌講座も受講中。

休日は一人で本屋に出かけるのが至福の時間。