社会福祉士になるには

社会福祉士になるには

1.社会福祉士の仕事

社会福祉士は、福祉の仕事に携わる国家資格です。
ソーシャルワーカーとも呼ばれ、今後ますます需要が高まると考えられている専門職です。

広い福祉分野で活躍できる資格

福祉とは、生活上の困難を抱えている人に、公的扶助による支援や介助を行うことです。支援・介助を必要とする人は、病院、保健所、児童相談所、障がい者養護施設、特別養護老人ホームなど、社会のあらゆる場所にいます。加えて、地域住民が抱える課題が複雑化・複合化する中で、これまでのような属性別の支援体制では、対応が困難な課題も増えてきました。今後は、社会福祉士にも、より包括的な支援への対応が求められることになってくることは自明です。

今後ますます需要が高まる社会福祉士

2021年に「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」が施行されました。厚生労働省がまとめた「社会福祉法の改正趣旨・改正概要」を見ても、専門職と街づくりや共通の趣味でつながって地域活動している人たちとの出会いが、地域へさまざまな影響を与えるよう期待されていることがわかります。
これまで社会福祉士というと、高齢者や障がい者、貧困に陥っている人、子どもなど、自分自身の力や家族の支援だけでは通常の生活を送るのが難しい人たちおよびその家族からの相談を受けて、生活に関する問題や不安を解消するための支援策を提案するのが仕事というイメージが強かったのではないでしょうか。しかし、今後は、新しい時代の社会に備え、地域共生社会に貢献する専門職として地域と協力しながら人々が共生する社会を築くことが期待されているのです。

2. 社会福祉士になるには

社会福祉士になるには、例年2月に実施される国家試験に合格しなければなりません。
年に1度の機会を逃さないように試験日に照準を合わせて準備をしていく必要があります。

国家試験の受験資格を得る

社会福祉士試験の受験資格を得る方法は12通りあります。代表的な方法は、一般養成施設等、短期養成施設等、福祉系の4年制大学・短大、のいずれかを卒業・修了することです。通信制の一般養成施設や短期養成施設は、働きながら受験資格を得たいという方におすすめです。ただし通信課程の場合でもスクーリングや実習は必要となりますので、仕事との調整は必須です。

《一般養成施設等》
①一般大学等4年 → 一般養成施設等(1年以上)
②一般短期大学等3年 → 相談援助実務1年 → 一般養成施設等(1年以上)
③一般短期大学等2年 → 相談援助実務2年 → 一般養成施設等(1年以上)
④相談援助実務4年 → 一般養成施設等(1年以上)
福祉に関わる経歴を持っていない方は、一般の養成施設の修了を目指します。大学や短大を卒業していないけれど相談援助の実務を4年以上行っていた方もこちらに該当します。

NHK学園社会福祉士養成課程の1年コース、1年6か月コースが該当します。

《短期養成施設等》
⑤福祉系大学等4年 → 基礎科目履修 → 短期養成施設等(6か月以上)
⑥福祉系短大等3年 → 基礎科目履修 → 相談援助実務1年 → 短期養成施設等(6か月以上)
⑦福祉系短大等2年 → 基礎科目履修 → 相談援助実務2年 → 短期養成施設等(6か月以上)
⑧社会福祉主事養成機関 → 相談援助実務2年 → 短期養成施設等(6か月以上)
⑨児童福祉司・身体障害者福祉司・査察指導員・知的障害者福祉司・老人福祉指導主事・実務4年 → 短期養成施設等(6か月以上)
福祉系大学で福祉に関わる「基礎科目」を履修済みの人は、短期養成施設での学習で済みます。

NHK学園社会福祉士養成課程の9か月コースが該当します。

《福祉系大学等》
⑩福祉系大学等4年 → 指定科目履修
⑪福祉系短大等3年 → 指定科目履修 → 相談援助実務1年
⑫福祉系短大等2年 → 指定科目履修 → 相談援助実務2年
最も短いルートで受験資格を得られるのが、福祉系の4年制大学を卒業した方です。在学中に「指定科目」と呼ばれる社会福祉士に関する科目を履修した方はそのまま国家試験を受験することができます。3年制・2年制の大学や短大を卒業しており、指定科目を履修した方は、相談援助の実務経験を1年・2年積むことで受験資格が得られます。

資格取得をめざすにあたっては、受験資格を満たしていることを確認する必要があります。詳細は下記をご確認ください。

社会福祉士試験の受験、社会福祉士としての登録申請

試験は年1回、2月上旬頃の実施です。申込みは9月上旬~10月上旬頃の受付です。試験はマークシート形式です。併せて精神保健福祉士も受験する場合や、共通科目免除が適用される場合は、受験費用が異なります。
社会福祉士試験に合格した後は、実際に社会福祉士として働くために公益財団法人社会福祉振興・試験センターへ登録申請を行い、登録証が交付されます。

3. 実務経験として認められる職種・認められない職種

社会福祉士試験の受験資格においては、多くのケースで1年以上の実務経験が必要とされています。実務経験として認められる職種として児童分野、高齢者分野、障害者分野、その他の分野、現在廃止事業の5分野に分けて示されています。 児童分野で代表的なのは、保育士や児童指導員、高齢者分野では生活相談員や支援相談員、障害者分野では身体障害者福祉司などです。特に、これまでに社会経験がある人は、現在廃止事業の分野も確認する必要があります。社会福祉士は、40代以上の社会人が実務経験を活かして活躍できる職種である一方、過去に働いていた事業が現在は廃止されている可能性もあります。該当する実務経験がないか、確認しましょう。

4. 社会福祉士国家試験の方向性

2025年2月実施試験より新カリキュラム対応に

2019年に厚生労働省から社会福祉士の教育内容の見直しが発表されました。国が目指す「地域共生社会」実現のために、その中心的な役割を担う社会福祉士の養成カリキュラムを見直すことが新カリキュラムの趣旨です。主な変更点は次の点です。

① 科目名「相談援助」が「ソーシャルワーク」に変更
従来から社会福祉士の仕事のメインである相談援助ですが、ソーシャルワークの専門職としてより幅広くスキルを活用することが求められています。

② 新科目「地域福祉と包括的支援体制」を追加
地域共生社会の実現のために必要な、地域福祉の考え方、多職種連携、地域ネットワーク構築などの知識を習得します。

③ 実習の名称・時間数の変更、実習先の追加
実習の名称が「相談援助実習」から「ソーシャルワーク実習」に変更。実習時間が180時間から240時間以上と60時間増え、1ヵ所以上から2ヵ所以上の事業所・施設・相談機関で実習を行うことになりました。

2025年2月実施の試験より新カリキュラム対応となり、試験科目が大幅に変わります。また、事例問題の出題が増えることが予想されています。社会福祉士試験の合格を目指す方は、新カリキュラムに対応した対策が必要です。

5.社会福祉士を取り巻く状況

これからの社会福祉士には「地域共生社会」に寄与できることがより一層求められます。2021年に施行された「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」では、社会福祉法に基づく新たな事業として、以下の3点が挙げられています。

① 包括的な相談支援・相談支援にかかる一体的実施
これまで高齢分野、障害分野、子ども分野、生活困窮分野と分野で分けられていた相談支援を、属性や世代を問わない一体的に行うことができるしくみとし、相談の受け止め、情報や支援を積極的に提供し、多機関の協働をコーディネートすることが求められています。

② 狭間のニーズへの対応
既存の取組では対応できていない狭間のニーズにも対応することをめざしています。例えば、就労支援として経済的な困窮状態にないひきこもり状態の人への就労体験や、コロナ禍を経て増加した住まい不安定などの問題が挙げられています。

③ 地域づくりに向けた支援
世代や属性を超えて住民同士が交流できる場や居場所の確保と、これまで結びつきのなかった人と人とがつながり、新たな参加の場が生まれ、学びの機会を生み出すためのコーディネートの役割が求められています。こうした活動により地域の活動が高まることが期待されています。

これまで縦割りだった社会福祉を横ぐしで捉えていこうというのが大きな趣旨です。これまでは、施設内だけで完結していた相談支援業務も、今後は法人と地域とのつながりを作ることも求められるように、徐々に変化していく可能性があります。
また、本法に対する参議院の「附帯決議」の第1項の最後には、「(重層的支援体制整備)事業を実施するに当たっては、社会福祉士や精神保健福祉士が活用されるよう努めること」と記載されたことは注目に値します。地域共生社会関係の公式文書に社会福祉士が明記されたのはおそらくこれが初めてのことです。

社会福祉士は、今後地域で立ち上がる新しい取り組みに関わる機会も増えることが予想され、よりクリエイティブな視点が求められるようになるでしょう。こうした複合的で難易度の高い業務は、大学を卒業したばかりの人にはハードルが高いと思われます。ここでものをいうのは、福祉業務に関する経験ではありません。大人の方々の社会人としての経験こそが必要とされます。一般企業で培った「人・モノ・金の管理法」や「効率性の追求」といった経験・ノウハウが社会福祉士資格と大きな相乗効果をもたらす可能性があるのです。
一般企業などでのあなたの社会人としての経験こそが、今後の社会福祉に求められていると言えるでしょう。

6.社会福祉士と相性の良い資格

社会人としての広い経験が大いに活かされる社会福祉士ですが、相乗効果が期待できる資格ももちろん存在します。すでにお持ちの資格に加えて、社会福祉士資格を取得することで幅広い活躍が期待できます。

精神保健福祉士

資格試験時に共通科目が10科目ほど免除になるため、社会福祉士の方が目指しやすい資格と言えます。社会福祉士と精神保健福祉士の違いは相談支援を行う対象者です。精神保健福祉士は、うつ病や統合失調症など精神疾患を抱えた人やその家族が対象となります。いずれも福祉系の国家資格で、2つを取得することで、よりソーシャルワーカーとしてのスキルを高めることができます。

※NHK学園社会福祉士養成課程1年コースではこれまでに多くの精神保健福祉士の資格保持者が社会福祉士の受験資格を取得しています。

ファイナンシャルプランナー(FP)

ファイナンシャルプランナーは、税金や不動産などお金に関するエキスパートです。社会福祉士はお金に関する相談を受けることも多くあるため、ファイナンシャルプランナーの資格が業務に活かされることは間違いありません。両方の資格を取得することで、より具体的に相談支援を行うことができるでしょう。

宅地建物取引主任者

不動産に関する専門知識を持つ宅地建物取引士も、社会福祉士と相性のいい資格です。 社会福祉士が携わる相談支援の中には、不動産に関わる内容も多くあります。対象者の住宅問題に携わる機会も多く、高齢者の増加などの情勢を考えると、宅地建物取引士の資格を取得している社会福祉士は、より需要が高まるでしょう。相乗効果が高い資格の一つです。

7.まとめ

解説してきたように、社会福祉士の可能性、将来性は大きく広がっています。
社会から大きな期待を担う資格です。
今求められている地域共生社会の実現のために、あなたの秘めた可能性を発揮しませんか。
多様な社会経験を持つ社会福祉士が今、求められています。