【NHKリレー講座】2026年度 第4回開催「目で原稿を読めないキャスターが伝えるニュース番組とは?」

9月16日(水)、登校プラスの水曜日「キャリア&コミュニケーション」では、第4回NHKリレー講座「目で原稿が読めないキャスターが伝えるニュース番組とは?~誰もが暮らしやすい社会を考える情報番組のこと~」を開催しました。
今回は、NHKラジオ・AMの番組「Nらじ」で金曜日を担当するNHKラジオセンター ニュースキャスターの杉田淳さん、NHK財団 ことばコミュニケーション部の柴田祐規子さん、そしてサポートとしてディレクターの新田健太さんにお越しいただきました。
視覚障害のあるキャスターの杉田さんの日々の生活やラジオ番組の舞台裏のお話を伺いながら、「誰もが暮らしやすい社会」「バリアフリー」について、生徒たちと一緒に考える時間となりました。
杉田さんは、どうやって情報を得ているの?

講座は、杉田さんの自己紹介から始まりました。杉田さんは、目の病気が原因で視力が低下し、現在は明るさがわかる程度の視力だそうです。そんな杉田さんの日常生活を支えているものの一つが、スマートフォンのアクセシビリティ機能「VoiceOver(ボイスオーバー)」です。
画面に表示された文字などを音声で読み上げてくれる機能で、スマートフォンからさまざまな情報を得ることができます。会場では実際にスマートフォンを操作し音声を聞きました。
また、日頃使用している白杖についても、その使い方や役割を紹介していただきました。
「目で見て情報を得る」ことが難しい場合、どのような方法で情報を得て、周囲の状況を把握しているのか。普段何気なく使っているスマートフォンの機能や、街で見かける白杖についても、見方が変わるきっかけとなりました。
「Nらじ」はどんな番組?

続いて、杉田さんと柴田さんが毎週金曜日にキャスターを務める、NHKラジオの「Nらじ」について紹介していただきました。
「Nらじ」金曜日の放送は、
オープニング
↓
みんなのニュース
↓
杉田デスクの半径2メートル
↓
気象情報
↓
交通情報
↓
みんなのエンタメ
という流れで構成されています。
「みんなのニュース」では、最新のニュースだけでなく、「みんなに知ってほしい出来事」を取り上げています。

例えば、
- 旧優生保護法をめぐる最高裁判決
- 大阪・関西万博のバリアフリーの取り組み
- 盲導犬が減っていること
など、社会で起きているさまざまな出来事を、杉田さん自身が「みんなに知ってほしい」という視点から選び、伝えているそうです。
実際の放送を聞いてみよう!「みんなのエンタメ」

「Nらじ」のコーナーの一つ、「みんなのエンタメ」では、杉田さん自身がさまざまな体験をし、取材をした様子を紹介しています。
今回、参加した生徒が実際に聞いたのは、昨年12月に放送された、
「障害者が楽しむオートバイレースに込められた思い」
という内容でした。
視覚に障害のある杉田さんが、実際にオートバイに乗るという体験。
杉田さんは、実際にバイクに乗り、ハンドルを握ってエンジンをかけ、走行を体験しました。
その中で感じたエンジンの振動や音、走り出したときに感じる風、体に伝わるスピード感など、視覚に頼らず身体全体で感じたバイクの魅力を言葉にして紹介。
杉田さんだからこそ感じ取った、「見る」こととは違う感覚を通したバイクの世界が生徒たちにも伝わってきました。生徒たちも興味深く耳を傾けていました。
「杉田デスクの半径2メートル」から見えてくる日常

次に紹介されたのは、「杉田デスクの半径2メートル」。
これは、杉田さんの身の回りで起きるさまざまな出来事を、当事者の視点から語るコラムコーナーです。
これまでにも、
「白杖で街を歩いていると、不思議な出会いが生まれます」
「クロックポジションってわかりますか?」
など、日常の中で感じたことを紹介してきました。
「クロックポジション」とは、時計の文字盤にたとえて方向を伝える方法です。
「12時の方向に醤油があります」
「次の角を2時の方向に進みます」
というように、方向をわかりやすく伝えることができると説明がありました。
生徒の中には、この「クロックポジション」を知っている人もいて、杉田さんも驚かれていました。杉田さんにとって、正確な情報を得ることは、周囲の状況を把握するためにとても大切なこと。だからこそ、クロックポジションは「一番わかりやすい説明方法の一つ」なのだそうです。
経験談として杉田さんの大好きな冷やしたぬきそばのワサビのエピソードも紹介されました。
同じことでも、説明する人によって伝え方が違うことがあります。何気ない日常の一場面からも、「相手に正確に伝えること」の大切さについて考えることができました。
「みなさんが考える『バリア』とは何ですか?」

講座の後半では、杉田さんと柴田さんから生徒たちへの質問もありました。
「みなさんが考える『バリア』とは何ですか?」
生徒たちからは、
「階段」
「無関心」
「当事者以外が考えたルール」
「段差」
「自分が不自由に感じていること」
「日本人かどうか」
など、さまざまな意見が寄せられました。
「バリア」と聞くと、段差や階段など、目に見えるものを思い浮かべる人も多いと思いますが、
生徒からは「無関心」や「当事者以外が考えたルール」といった、目には見えないものも挙げられました。自分の経験や考えをもとに、「バリアとは何か」を考えました。
誰もが暮らしやすい社会にするために、必要なことは?

さらに、
「誰もが暮らしやすい社会を実現するためには、何が必要だと思いますか?」
という問いについても考えました。
生徒からは、
「相手と自分との境界線をしっかり引くこと」
「見て見ぬふりをせず行動すること」
「違いを否定しないこと」
「相手に合わせるのではなく、相手がその人らしく選ぶことを大切にすること」
など、たくさんの意見が寄せられました。
一つの答えに決めるのではなく、それぞれの考えを出し合うことで、「暮らしやすい社会」とはどのような社会なのかを考える時間となりました。杉田さんと柴田さんも、生徒たちから寄せられたさまざまな意見に「とても考えさせられました」「胸が熱くなりました」とのコメント。
そして、「次回の『Nらじ』の番組内でも、ぜひ紹介しましょう」と話してくださいました。
「ラジオを聴いてみたい!」生徒たちからのメッセージ

講座の最後には、杉田さん、柴田さんへのメッセージも寄せられました。
「まず相手の意見を尊重することが大事だなと思った」
「今週、金曜日のラジオはぜひ聞いてみたいです」
「ラジオについて興味が湧きました」
講座を通して、実際のラジオ番組にも関心を持つきっかけとなりました。
「知ること」から始まる、新しい気づき
今回のNHKリレー講座では、ニュース番組の制作についてやラジオの魅力だけでなく、視覚に障害のある杉田さんの経験を通して、「情報を伝えること」「相手の立場から考えること」「誰もが暮らしやすい社会」について考えました。
普段、自分が当たり前だと思っていることも、別の立場から見ると、違って見えることがあります。だからこそ、さまざまな人の話を聞き、実際の体験や考えに触れることは、自分の世界を広げるきっかけになります。
杉田さん、柴田さん、新田さん、貴重なお話をありがとうございました!