NHK学園卒業後、放送大学へ進学。高校時代の挑戦が今の充実した大学生活につながっている
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江口晴香さんは2022年度の登校コース卒業生。在学中には、文芸部・書道部に所属し、「青少年読書感想文全国コンクール」(全国学校図書館協議会・毎日新聞社主催)で毎日新聞社賞を受賞のほか、短歌コンクール、英語のレシテーションコンテストやエッセイコンテストに参加するなど、さまざまなことに挑戦しました。
→ 在学当時の江口さんへのインタビュー記事はこちら
卒業後は放送大学へ進学した江口さんに、大学での生活や今取り組んでいることについて、お話を聞きました。
不安を1つ1つ解消しながら、自信を取り戻しながらの3年間
江口さん:放送大学の場合は、NHK学園同様に自分のペースで学習のスケジュールを組むことできます。私は、今年度の前期は10教科(17単位)の授業を5日間で履修しています。週末2日間は休息にあてて、友人と出かけたり、趣味のことをして過ごしています。講座の試聴時間も「NHK高校講座」より長くて、最初は内容も難しく感じましたが、NHK学園の3年間で、自学自習のペースが身についていたので、自分が思っていたより早い時期に学習のペースを作ることができました。
江口さん:クラブ活動については、放送大学公認クラブ、自主サークルなどたくさんのクラブが各学習センター*にあって、活発に活動しているようです。書道部やコーラス部などなど、メンバー募集のポスターが貼ってあって自由に見学、参加できるシステムになっています。
私は「放大短歌会」というグループに所属していて、こちらはオンラインで完結するので全国どこからでも参加できます。そのほか私の所属する文京学習センターでは大学主催で、10代〜20代の学生限定の教授とのトークセッションの会や、英語の学習グループ、長期休みに開催される特別講座など、自宅学習以外でもさまざまな活動に参加することができます。
*「学習センター」とは、各都道府県に設置されている放送大学のキャンパスのような施設。
江口さん:授業はどれも興味深く、楽しいものばかりで、1つに絞ることはとても難しいのですが、挙げるとしたら、昨年の前期に履修した「ビートルズde英文法」です。これは入学して最初にラジオで視聴した授業です。
本当のことを言うと、NHK学園卒業後、4月に入って友人が大学や専門学校の入学式や授業の様子をSNSにアップしているのを見て、自宅で一人で学習する自分に寂しさと不安を感じてしまいました。そんな時に、ラジオの向こうから、ビートルズのメロディーに乗って講師の先生方から呼びかけられる「さあ、一緒にビートルズを歌って楽しく勉強しましょう!」ということばに励まされながら、「私にも楽しい大学生活がスタートしたのだな」と気持ちが前向きになったことを今でも鮮明に覚えています。
この時の気持ちを短歌にして秦野市の「夕暮祭短歌大会」に応募したのですが、思いがけず、佳作をいただいたこともいい思い出です。自分の歌を発信するのは少し恥ずかしいのですが、やっぱり作った歌を多くの方に知っていただけることは今後の励みにもなるので、この場を借りてご紹介させていただけると嬉しいです。
初講義ポニーテールを高く結い春風の道ずんずん進む
江口さん:NHK学園では、国語科の小山先生に3年間の文芸部の活動を通して文章指導をしていただきました。振り返ってみると、字数を費やして説明を繰り返すのではなく、短い文章で簡潔に、自分の言いたいことを表現することの大切さを指導していただいたと思います。
高校3年間でさまざまな文芸コンテストに参加しましたが、仕上げの段階になると「晴香さんの言いたいことを一言で!一文で!」と指導していただくことが多かったように思います。もちろん小山先生には他にもたくさんの大切なことをご指導いただきましたが、その真髄を一言で言い表すのはやはりとても難しいです。
江口さん:高校3年生の夏に「全国青少年感想文コンクール」に挑戦して、「3年間の集大成になった!」という手応えもありましたので、この後、卒業までどうしよう…と思った時に、ふと短歌を作ってみようと思いました。
英語の教科担任だった貝澤先生が短歌をされていることは聞いていたので、スクーリングの帰りにいくつか自作の歌を持って指導をお願いしてみました。「指導は、甘口、中辛、辛口のどれがいい?」と聞かれて、とっさに「辛口でお願いします!」と答えたのを覚えています。
初心者の私は、本当に短歌の体をなしているか、いないかのレベルだったと思いますが、先生に解説してもらいながら、添削していただくと、拙い歌が、何か魔法にかかったように生き生きとしたものに変わっていくことに、とてもワクワクしました。本当に軽い気持ちから始めた短歌ですが、最初の段階で貝澤先生に指導していただいたことは大きかったと思います。
ちょうどその頃、国語のスクーリング授業でも短歌をやっていて、国語の教科担任だった山﨑先生にも背中を押していただきました。文芸部の部誌に載せる短歌をいくつかみてもらったことがきっかけで、「斉藤茂吉ジュニア短歌コンクール」に応募するように勧めていただきました。感想文コンクールに挑戦して、これで私の高校時代の「挑戦」は終わり!と思っていましたが、卒業を目前した12月に「短歌コンクール」に挑戦したことはこれからも短歌を継続しようと言う気持ちに繋がったと思います。
江口さん:今回は、4首応募して2首が入選しました。入選した2首を紹介します。
ローファーのすりへる底は三年の重みにたえてサクラサク朝
このローファーは高校の入学祝いに買ってもらった大切な靴です。卒業式当日はちょうど雨が降っていて花冷えの一日でした。「この靴を履いて通うのも今日で最後だな」という寂しい気持ちと、お気に入りのローファーと共に通ったNHK学園での3年間を形にして残せたことは嬉しかったです。
踊り子の車窓から見る波しぶき海と私のラプソディーかな
昨夏、家族旅行した時の思い出の歌です。電車に揺られることや、ゴーッという反響音は今でも体調悪化の引き金になるので気をつけて生活しています。スピードの出る特急電車は特に苦手なので、この何年か旅行はできずにいました。この時は久しぶりに旅行するワクワク感と、「旅先で具合が悪くなったらどうしよう」という不安とが入り混じった気持ちを短歌に込めました。
下の句は音楽用語で表現したいと決めていたのでいくつか検索して聴いてみると、リストの「ハンガリアンラプソディー第2番」の曲調がピッタリだったので「これだ!」思いました。
今、思ったのですが、何とも言い表せない複雑な感情を言葉にする、しかも31文字で表現するのはとても難しいのですが、難しいからこそ楽しいのかな、と感じます。
江口さん:来年もまた応募してNHKホールに来たいと思いますし、さらに表現豊かな歌を詠めるようになることを目標に、研鑽したいと思いを新たにしました。まだまだ未熟なので、続けることで少しずつ表現力を磨いていけたらいいな、と思います。
昨年は「歌会始」にも詠進したのですが、継続しようと思いますし、祖父が購読している新聞の日曜歌壇にも投稿してみようかと考えています。祖父は私が色々なことに挑戦することをすごく楽しみにしてくれているので、祖父の応援を励みに、さまざまなことに挑戦してみようと思います。
江口さん:私の高校時代は不安を1つ1つ解消しながら、自信を取り戻しながらの3年間だったので、やっぱり優しく心に寄り添ってくれる歌が好きです。色々な歌に出会うたびに「好きな歌」も日々変化しているのですが、短歌大会に挑戦しようと思って過去の受賞作を調べていたときに目に留まった歌があります。
できるだけ大事なことをまちがえて歩いていこうどんな雨でも
中学で学校に通えなくなって、自分には明るい未来は開けないのかもしれないと思い悩んでいる時代が長かったので、この歌を知った時、すごく心に響いたというか、私の心を明るく照らしてくれるような歌だな、と思いました。私もいつかこんなふうに、人を励ましたり、心に優しく届く歌を詠みたいな、とお手本の一つとして大切にしています。実はこの歌の作者はさきほどもお話した英語科の貝澤先生です。偶然、心に留まった歌の作者が身近な人だったので本当にびっくりしました。
※江口さんが紹介してくれた貝澤先生の歌は、「第18回NHK全国短歌大会」において「近藤芳美賞」の選者賞を受賞したときの15首のうちの1首です。「近藤芳美賞」は15首1組で応募いただく部門です。
江口さん:このたび、2024年度前期のNHK若者モニターに就任しました。たまたま見ていた番組で若者モニター募集をしていたことが応募のきっかけです。高校時代は文芸部の活動に限らず、「自分の考えや感じたことを言葉にする」ということに力を入れてきました。卒業後はずっと短歌に力を入れてきたので、久々に長い文章で自分を表現してみたいと思いました。
なので、即挑戦してみようと思いました。応募の課題はいくつかの番組から選んでその感想をまとめるというものでした。文芸部に在籍しているときはいつも小山先生に指導していただいていたので、自分一人でも頑張って書き続けている姿を小山先生に見てもらいたい気持ちもありました。
採用の通知をいただいた時は「まさか自分が…」と信じられない気持ちでしたが、小山先生に良い報告ができて嬉しかったです。改めて3年間文芸活動を頑張ったことが今回の結果にも繋がっているのかなと思いました。
NHK学園在学中に「メディア・ラーニング」という科目でNHK特集を視聴して感想をレポートにまとめるという課題に取り組んだこと、スクーリングでNHKの報道番組ができるまでを、実際現場でお仕事されていた等々力先生(当時NHK学園高等学校校長・現NHK学園理事長)から学んだことも大きかったと思います。
余談ですが、「NHK全国短歌大会」の会場での休憩時間に、偶然等々力先生にお目にかかることができました。先生には「N学作文コンクール」に入賞したとき講評を書いていただいたり、進路選択の際にアドバイスをくださったりと、とてもお世話になりました。久しぶりにお会いして、今回の短歌大会入選やNHK若者モニター就任を報告することができたので、とても嬉しかったです。
江口さん:早速4月1日から活動しています。月初めに1か月間の視聴番組の予定表が送られてきて、それに沿って番組を視聴していきます。選択式のアンケートといくつかのテーマが提示されて、その中から選んで感想・意見を述べます。
いつも見ている番組もあれば、若者モニターにならなければ見なかったであろう番組もあって、自分の興味の幅が少し広くなりそうです。自分の感じたことを簡潔に、相手に伝わるように表現することは難しいですが、文章にする作業はとても楽しいです。NHKの番組は幅広い年代の方が見ていると思うのですが、人生経験豊かな方とはまた違った視点で番組から感じたことを発信していけたらいいなと思います。
江口さん:「これから新しく!」ということではないのですが、4月下旬から書道部が再開されるのでOBとして参加するのを楽しみしています。昨年は学園祭にも出品させていただいたのですが、今後も書道は続けていきたいと思います。顧問の川合先生が部員に向けていくつかおすすめの展覧会を教えてくださって、折々に機会を作って観にいくようになりました。素晴らしい作品をたくさん拝見する中で自分の感性が磨かれていったらいいなあ、と思うと同時に、かな作品については、変体仮名の知識がないと何が書かれているのか全くわからないことがすごくショックで、勉強してみたいなと思っています。
また、昨年秋頃から、地域の子ども食堂のお弁当作りを大学生ボランティアとしてお手伝いしています。NHK学園ではソーシャルアクティビティクラブに入っていたこともあり、国立市の子ども食堂に何回かお手伝いに行ったことがあるのですが、自分の住んでいる地域でボランティアを継続できることになって嬉しいです。
振り返ってみると、NHK学園で色々と挑戦したことが、今の大学生活の充実につながっていることを実感します。これからも何か新しく挑戦したいことは出てくると思うのですが、まずは今行っていることを着実に継続して充実させていく、という思いを新たにしています。卒業後してからも、NHK学園の先生方がいつも応援してくださっているという安心感を改めて感じています。
大学生になってからも自身を進化させる江口さん
大学生になってからも、一つひとつの活動を通してご自分の取り組みを深化させていく江口さん。何かに取り組むとき、自らの姿勢次第で得られる学びは何倍にも変わってくるのだ、ということを改めて感じます。
すてきなお話を聞かせていただき、ありがとうございました。