
第26回NHK全国短歌大会で発表、第27回題詠「口」(くち)
第27回NHK全国短歌大会の作品の募集が始まりました!
(大会の詳細はこちら)
これから題「口」(くち)で作歌する方に向けて、NHK学園短歌友の会選者で、大会選者の松村正直さんに題詠の作品作りのヒントとなるような例歌を紹介していただきました。
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第27回NHK全国短歌大会選者
松村正直さん(昭和四十五年)
NHK学園短歌講座講師。短歌友の会選者。
いろいろな「口」を探してみよう!
今回のNHK全国短歌大会の題詠は「口」です。一口に「口」と言っても、さまざまな口がありますね。まず思い浮かぶのは人間の口でしょうか。
開けたり閉じたり、食べたり飲んだり話をしたり、口はよく動く働きものです。それだけでなく、軽かったり重かったり、うまかったり下手だったり、減らなかったり滑ったりと、口は慣用句にもたびたび登場します。
口あけて歯の治療受くぶざまなる姿なれども憩ひにも似る
高野公彦『水行』
墓石にかけようと買つてきた水の、ペットボトルに口つけて飲む
山下翔『温泉』
夕飯のさなかに仕事の電話来て口はわれより上手に話す
斎藤美衣『世界を信じる』
また、「口」と呼ばれるのは顔にある口だけではありません。私たちの暮らしには他にもいろいろな口が存在します。
赤青の蛇口をまわし冬の夜の湯をつくりおり古きホテルに
吉川宏志『石蓮花』
新宿駅西口コインロッカーの中のひとつは海の音する
山田富士郎『アビー・ロードを夢みて』
座るときに膝がぶつかる窓口に斜めに座り要件を聞く
三潴忠典『曲がらなければ伊勢まで行ける』
がま口の口にあらざるところから口開いてきて硬貨は洩れる
生沼義朗『空間』
家の中を見回せば蛇口や排水口、玄関口や勝手口があり、駅に行けば改札口や東口・西口・北口・南口、建物には入口・出口や窓口や非常口があります。街中が口だらけと言ってもいいくらいです。
晴れし空仰げばいつも/口笛を吹きたくなりて/吹きてあそびき
石川啄木『一握の砂』
口角を上げて笑へと書かれゐる接客マニュアルのさびしき笑ひ
佐藤モニカ『夏の領域』
鉄棒の上に座って口喧嘩 くるんとぶら下がって口づけ
穂村弘『ドライ ドライ アイス』
口笛を吹いたり、歌を口遊(くちずさ)んだり、口角を上げたり、無口になったり、キスしたりと、人間の喜怒哀楽や感情もしばしば口に表れるようです。
こうして考えてみると、私たちの身の回りには実に多くの種類の「口」がありますね。さて、その中からどんな口を選び、どんな歌に詠んでみましょうか? 多彩な切り口の「口」と出会えることを楽しみにしています。
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