【結果報告】伊香保短歌・俳句大会

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2018.06.20

NHK学園生涯学習フェスティバル
伊香保短歌俳句大会実施報告

開催日時 :
短歌大会 平成30年6月11日(月) 13:00~16:00
俳句大会 平成30年6月12日(火) 13:00~16:00

投稿数 :
短歌大会2,370首/俳句大会4,674句

場所  :
「ホテル天坊」インペリアルホール(群馬県伊香保温泉)

選者 :
短歌大会 黒木三千代、小島なお、林田恒浩、永田和宏
俳句大会 高野ムツオ、舘野豊、田中亜美、堀本裕樹

短歌大会講演 : 「歌を読み込む力‐時間と歌‐」永田和宏

俳句大会対談 : 「師を語る‐鬼房と兜太」(高野ムツオ・田中亜美)

司会 : フリーキャスター 北林きく子

主催 : NHK学園・渋川伊香保温泉観光協会


■1日目「短歌大会」は250名が参加

今年も新緑の季節に開催された「伊香保短歌大会」は第17回を数えます。梅雨入りと台風により、天候が危ぶまれましたが、250名もの皆さまが、全国各地からご参加くださいました。

大会特選歌の発表に先立ち行われた、永田和宏先生による「時間と歌」に関する講演は、河野裕子さんとの思い出や時間をテーマにした作品を織り交ぜながら、初心者から投稿を楽しむ方まで、いずれの経験の方が聞いてもわかりやすく、さらにとても示唆に富む内容でした。
短歌が「時」、特に「一瞬」や「刹那」という短い時間を詠むのに適した詩型であって、歌に詠むことで長く記憶にとどめておけるというお話しには、なるほどと思わず頷いてしまいました。
また、時間の積み重ねをていねいに見つめ詠むことで、誰もが素晴らしい歌を生みだせる可能性がある、とのお言葉には勇気づけられた方も多かったはずです。

逆立ちしておまへがおれを眺めてた たつた一度きりのあの夏のこと        河野 裕子

子を打ちし長き一瞬天の蝉       秋元 不死男

一日が過ぎれば一日減つてゆくきみとの時間 もうすぐ夏至だ        永田 和宏

なお、大会大賞の一首には、NHK学園「短歌友の会」、「短歌実作集中添削コース」をご受講の千葉県・高仲一郎さんの作品<デイサービスへ体温食欲記入して母おくり出す吾も老人>が見事入賞しました。特選に選んだ林田恒浩先生は、「上の句、とても丁寧にうたわれていて、結句の『吾も老人』も『老々介護』のありさまを的確にあらわしていて良く、さらに効果をあげている」と評されました。

▲短歌大会選者のみなさん(右から永田和宏・小島なお・黒木三千代・林田恒浩)と司会北林きく子さん(左端)

▲短歌大会選者のみなさん(右から永田和宏・小島なお・黒木三千代・林田恒浩)と司会北林きく子さん(左端)


■2日目の「俳句大会」では金子兜太を詠んだ句が大賞に

翌日は、26回目となる伊香保俳句大会です。高野ムツオ先生と田中亜美先生による「師を語る-鬼房と兜太」、そして特選作品の紹介、表彰、堀本裕樹先生の司会による選評、当日句「伊香保の夏を詠む」発表が行われました。
対談では、ともに、1919年生まれの俳句界の’巨星’、佐藤鬼房と金子兜太について、愛弟子ふたりが語り合うという内容になりました。

 

切株があり愚直の斧があり     佐藤 鬼房
怒りの詩沼は氷りて厚さ増す    佐藤 鬼房
彎曲し火傷し爆心地のマラソン   金子 兜太
霧に白鳥白鳥に霧というべきか  金子 兜太

 

思い出に残る言葉として、金子兜太の「一読で映像を感じさせる句がよい」、佐藤鬼房の「俳句は、自得の文芸である」をあげつつ、ふたりの作品の根底には、共通した優しさや怒り、ヒューマニズムや杼情が流れているということで一致しました。また現代詩のようにも感じられる表現の多彩さ、スケールの大きさも共通しており、代表句をあげながら解説がありました。

なお、大会大賞の一句には、茨城県の根本菜穂子さんの<梅咲いて息をしている兜太の字>が入賞しました。特選に選んだ高野ムツオ先生は「金子兜太、十八歳の折の処女作に<白梅や老子無心の旅に住む>後に<梅咲いて庭中に青鮫が来ている>がある。この句は、亡くなった悲しみのみを詠っているのではない。兜太自身が『死んでもいのちは生きている』と述べていたように、字の中に金子兜太が生きている。それを実感しているのである」と評されました。

▲俳句大会選者(右から田中亜美・高野ムツオ・堀本裕樹・舘野豊)のみなさんと司会北林きく子さん(左端)

▲俳句大会選者(右から田中亜美・高野ムツオ・堀本裕樹・舘野豊)のみなさんと司会北林きく子さん(左端)

■「俳句の街を目指す」伊香保温泉

短歌大会・俳句大会の2日間、会場には共感と納得の一体感に満ち溢れました。大会開催にあたりましては、ご投稿の皆様、そして渋川伊香保温泉観光協会、群馬県渋川市ほか関係者のみなさまに厚く御礼申し上げます。

▲共催の「渋川伊香保温泉観光協会」大森隆博会長と職員のみなさん 「思い立ったら、伊香保温泉へどうぞお越しください」

▲共催の「渋川伊香保温泉観光協会」大森隆博会長と職員のみなさん 「思い立ったら、伊香保温泉へどうぞお越しください」

長い歴史をもつ伊香保温泉の町並みは、名所・石段街を中心に昔ながらの素朴な温泉情緒でいっぱいです。俳句の街を目指す伊香保温泉の石段街では、投句箱とともに、金子兜太の句碑が迎えてくれます。
その他、上田五千石、鈴木真砂女、鷹羽狩行、岡本眸、鍵和田秞子、深見けん二、平井照敏という名だたる俳人が、伊香保俳句大会での講演後に句碑を建立しています。湯けむりとともに句碑めぐりで伊香保温泉を訪れるのもまた楽しみのひとつです。ぜひみなさまお越しください。

▲金子兜太が揮毫した句碑<小鳥来る全力疾走の小鳥も>

▲金子兜太が揮毫した句碑<小鳥来る全力疾走の小鳥も>

「入選作品集」のお知らせ

入賞・入選作品は入選作品集に掲載しております。
ご希望の方には、700円(税・送料込み)で販売いたします。

【申込方法】
お葉書またはFAXで、①購入希望の作品集名(例:平成30年伊香保俳句(短歌)大会作品集)②冊数③ご住所④お名前⑤お電話番号をご記入の上、NHK学園教材サービスへお送りください。お電話でも受け付けます。
作品集と合わせて振込用紙をお届けいたしますので、到着後14日以内に代金をお支払いください。

「入選作品集」お申込先
〒186-8001 東京都国立市富士見台2-36-2
NHK学園内 教材サービス係