【コラム】NHK学園通信講座を支える先生にインタビュー! 教える人

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2018.02.07

俳句作品以外にも、評伝や評論など旺盛な執筆等で俳句界を牽引する宇多 喜代子先生。今回は、先生に「学ぶこと、学びつづけること」についてお話をうかがいました。

 

宇多喜代子(うだ きよこ)
1935年山口県生まれ。文化功労者。「草樹」会員代表。第29回現代俳句協会賞、第35 回蛇笏賞、第27回詩歌文学館賞受賞。NHK学園俳句倶楽部選者。読売新聞俳壇選者。

 

 

俳句をはじめると、信号待ちも苦にならない。人を待つのも楽しくなる。

 

 

――先生ご自身は、以前、NHK学園通信講座で「漢詩」を学ばれていらしたそうですね。

通信講座をやっていたらね、受講者の方がポストまでリポートが戻ってくるのを見に行くって気持ちが分かるの(笑)。「まだ戻ってこない?」って気持ちでね。で、あけてみたら70点とか(笑)。

封を切るとき、「今回はどうだろう?」と思う気持ちがわかります。

 

――通信講座は、“待っている気持ち” も大事ですよね。

いわゆる、辛気くさいですよと(笑)。

▲月に一度、東京・くにたちオープンスクールで教えていらっしゃる宇多先生。精力的なご様子に「どうしたら先生のように元気でいられるのですか?」と思わずおたずねしてしまいました。

▲月に一度、東京・くにたちオープンスクールで教えていらっしゃる宇多先生。精力的なご様子に「どうしたら先生のように元気でいられるのですか?」と思わずおたずねしてしまいました。

 

 

 

―― 一般のみなさんが俳句を学ぶ意味はどこにあるのでしょうか?

普通の人が詩などの作品をつくったりすることは、よその国にないことです。一般の人が自由に作品をつくるというのは、日本だけじゃないでしょうか。これはすばらしいことなんですよ。

 

――世の中のみなさんが作家であるというのは、自由ですばらしいことです。ぜひみなさんにも、なにか作品をつくっていただきたいですね。

そしてなにより、俳句をやっていちばんいいのは「退屈しない」ということです。人生でね、年をとって退屈しないってすごくいいですよ。

また、俳句をやると思い煩うことがなくなります。「あれが気に入らない、これが気に入らない」なんて愚痴を言わなくなる。ほんとうにそうですよ。

 

――それは何かに集中するということでしょうか。

集中するとか、面白いと思うものができてくるんですね。

そちらに関心が向く。自然や四季など、ほかのことに関心が向くんです。

 

――俳句は四季と密接に関わっています。

四季と人間。「春夏秋冬」と、あと「人」っていうのが大事。人と関わるというかな。

俳句をやっていると社会が広がって、仲間ができる。

そういう楽しさを知った人は幸せですよね。

 

 

高齢者って人はすごいんです。

 

 

▲俳句講座では各種コンクールも実施。発表する喜びを味わえます。

▲俳句講座では各種コンクールも実施。発表する喜びを味わえます。

――通信講座の受講を検討されているお客様で、「自分は歳だから」「知識がないから」と迷う方もいらっしゃいます。

それはないない(笑)。100歳を過ぎて始めた受講者さんもいましたよ。

だからわたし言うの、「はじめたときが適齢期」って。80歳であろうと90歳であろうと、はじめたときが適齢期。

 

――はじめる前の人はちょっと心配性なんですね。

そこをとびこえてきている人は、明るくて元気です。

 

――特に、ご高齢の方が新しいことをはじめることについて、どう思われますか?

高齢者って人はすごいんですよ。よく言うんですけれど、「わたしは、俳句ではあなた方が知らないことを知っているけれど、あなた方は立派に人生を生きてきた社会人の方々なんです」と。

俳人の高屋窓秋先生がいつもおっしゃっていました。

「社会生活を何年かした人は、俳句は一年ぐらいするとできるよ。ちゃんと生きてきた人だから、高齢者はそこがいいんだよ」と。

 

――歳を重ねるほど、それが強みになると。

高齢者のいいところはね、今の人に比べて国語力があること。手紙が書けること。これは大きいです。

旧制小学校に行った人は、教養としてみんな『源氏物語』とかを読んでいる世代なんですよ。人間としての基礎力がすでにある。

あとは俳句独特のルールを学べば、すぐできますよ。「歳だ」ってことはないんです。

 

――生きてきた経験がそのまま作品になるって素敵ですね。

そりゃね、歳をとるとどこへ行くのも一苦労です(笑)。

でも、老いの日にも年齢相応の創作の楽しみがあるんです。

電子機器氾濫の便利な時代だけれど、たまには素手で「ゆっくり」楽しむのもいい。

俳句をとおして、「ゆっくり」という速度ならではの視界に生きる景色に、ちょっと目を留めてみませんか。

 

(インタビューは2018年2月のものです。)