3月24日(土)東京・国立市のNHK学園にて、俳句講座「春の1日スクーリング」を開催いたしました。小島健講師と宇多喜代子先生の講義のもようをご紹介いたします。
自然、人間、笑いを大いに詠み、俳句で豊かな人生を!
NHK学園俳句講座専任講師 小島 健

▲「河」同人。俳人協会理事。日本文藝家協会会員。NHK学園専任講師。「俳句には自分と他人を慰め、励ます強い力=俳句力がある!」というのが小島講師のモットーです。
第1部、小島健講師の講義テーマは、ズバリ「目指せ、特選!-NHK全国俳句大会-」。誰もが一度は座りたいNHKホールの特選席。特選となるためには、何をすれば良いのか・・・を、小島流ユーモアたっぷりに解説してくださいました。とくに過去の特選句を事例にした「傾向と対策」は、説得力あり。
推敲の大切さについても、芭蕉の事例をあげて紹介してくださいました。
【初案】 山寺や石(いは)にしみつく蝉の声
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【再案】 さびしさや岩にしみ込(こむ)蝉のこゑ
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【成案】 閑さや岩にしみ入蝉の声
芭蕉は「句整はずんば舌頭に千転せよ」と言ったそうです。「句の形が整わなければ、口で千回言ってみよ」との意味を、小島講師は具体的な推敲のポイントとあわせ解説してくださいました!

▲スクーリングの参加者は、83名。沖縄県や宮城県からも、桜が満開の3月24日、東京・国立市のNHK学園においでいただきました。お昼休みをはさんで、第2部は「連作の作り方」、第3部「師を語る―桂信子と私」へと宇多喜代子先生の講義が続きました。
大花火何と言ってもこの世佳し

第2部からは宇多喜代子先生の講義がスタート。「連作のつくり方」について、「夜、つくった句は要注意!夜は感情が高まっているので、良くできたと思い込んでしまう。朝、見直すことが大切!」とアドバイス。宇多先生ご自身は、なんとつくった句を部屋の壁にずらっと貼り、外出から帰った時に見てチェックされるそうです。
そして、いよいよ第3部。「私は、桂信子を師として歩んできたことを幸せに思っています」と、宇多先生は語り始めました-。
◆桂信子。大正3年(1914年)大阪市生まれ。26歳で結婚、2年後に夫が急逝。以後会社員として働く。昭和20年空襲によって家が全焼した際には句稿だけをもって避難した。その句稿から自身の第一句集『月光抄』ができる。「草苑」主宰。第26回蛇笏賞受賞。第11回現代俳句協会大賞受賞。2004年死去。

▲宇多喜代子先生は昨年12月「この世佳し―桂信子の百句」を執筆しました。
桂信子は、この世を懸命にかつ勤勉に生き通した俳人であると、宇多先生はおっしゃいます。
ある日、句会が終わり、自宅に戻った宇多先生。この日、先生は、投句した句のことで心が揺れていたといいます。深夜11時過ぎ、電話が鳴りました。桂信子さんからの電話でした。
「私の心の揺れを、桂信子は分かり、厳しく叱責しました。細かいことは、ほとんど指導する師ではありませんでしたが、俳句への姿勢について怒るときは、ほんとうに厳しかった」と、宇多先生は思い出を語りました。
俳句大会やスクーリングなど、いつも誠実に対応してくださる宇多先生ですが、師・桂信子さんの影響が大きいに違いありません。
人生に師とよべる人を持てることは、とても素晴らしいことである、と強く感じた宇多先生のスクーリングでした。