【コラム】NHK学園通信講座を支える先生にインタビュー! 教える人

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2018.06.08

理系の大学から印刷会社のサラリーマン生活を経て、写真の世界へ飛び込んだ清田一樹先生。今回は、写真講座での指導に情熱を注ぐ先生にお話をうかがいました。

 

清田一樹(きよた かずき)
1963年北海道小樽市生まれ。1987年信州大学繊維学部・機能高分子学科卒業後、日本写真学園で写真を学び、1996年よりフリーの写真家として活動。NHK学園写真講座講師、東京デザイナー学院非常勤講師。

 

 

写真を始めると生活がアクティブになるのです。

 

 

――清田先生がNHK学園の講師になられたきっかけを、お聞かせいただけますでしょうか?

私は1963年生まれなんですが、ちょうどカメラブームで、北海道の田舎だったものですから父親が写真を自分で焼くんですね。いわゆる、お座敷暗室が家にあって。

2、3歳の頃にそのシーンを見ていたんでしょう。三つ子の魂百までといったかんじで、中学生時代は写真部に所属。世代的にも空前のカメラブームで盛り上がっていて、自分にとっても写真は楽しめるものだったんです。

 

――そして、写真の学校へ ?

いえ、ぜんぜん畑違いの理系の大学へ行きまして。そのあと印刷会社に勤めたんですが、26、7歳のときにどうしてもつまらなくて(笑)。

やはり写真が面白いという思いが強く、働きながら写真の専門学校に通いました。

その後、会社を辞めて、「自分の作品を撮りたい」という気持ちがベースにありましたので、職業写真家ではなくフリーの道へ。

卒業した学校で講師をやっていたとき、校長だった写真家の児島昭雄先生がNHK学園で講師をされていたつながりから紹介を受けました。

 

NHK学園の写真コンクールの審査員も務める清田先生。 「作品につけられるタイトルというのも、けっこう大事なものなんですよ」

NHK学園の写真コンクールの審査員も務める清田先生。 「作品につけられるタイトルというのも、けっこう大事なものなんですよ」

――そもそも論になりますが、一般の人が写真が上手に撮れるようになると、どのような楽しみが得られるのでしょうか?

まず、習い事に準ずるものはみんなそうでしょうけど、「ここまでできるよ、こんなの撮ったよ」と言えば、だいたいの人は褒めてくれるでしょう。そんなふうに自慢できるというのがあります(笑)。

 

――いい写真が撮れると人に見せたくなります(笑)。

褒めてもらえれば欲も出ますし、生活がよりアクティブになる。

たとえば、天気がよければあの場所へ写真を撮りにいこうとか、花の季節だから名所へ出かけようとか。テレビや写真集で見た場所に行って自分も撮ってみたいとか。

 

――「写真を撮りに出かけよう!」と、撮るために行動範囲が広がるんですね。

撮影では、天候とかシャッターチャンスとか、なかなか自分の思う通りにならないことが多いですよね。

そういう思い通りにならないものに対して、天気を待つとか、夕日を待つとか、いかに相手と対峙し、コントロールできるかという面白みもあります。

そして、撮りたいイメージに近づくために天候や地形の下調べをするなど、自分で作品をプロデュースしていくという楽しみも広がってきますよね。

 

 

 

 

写真って自分が映るんです。

 

 

 

 

――今はデジタル全盛時代ですが、写真を撮るうえで大切なことはありますか?

「何を撮るかが問題だ」というのは、今も昔も同じテーマです。

技術的なことは置いておいて、写真って自分が映るんです。これはコワいことなんですが、被写体に真摯に向きあっているかどうか、分かる人には分かってしまうんですね。

ですから、写真を撮るときは「自分と対峙しているんだ」と思っていただければと思います。

 

――それはコワくもありますが、本質であり、写真を撮る醍醐味でもありますね。

人物撮影に関しては、被写体は自分の表情を反映している、表情なり相手に対する思いなりが反射してきている、と思って間違いないです。

だから、人物を撮るときは相手を受け止めてあげることが大事だと思います。

また、物も同じで、富士山がそんなに好きじゃないのに富士山を撮りに行ってもつまらないと思うし、「富士山大好き!」という人が撮った写真にはかなわないんじゃないかと思います。

 

――「好きなものを見つける」ということも、大事なことなのですね。

 

 

いい写真を撮るには、画角を自分の目に近づけてあげるんです。

 

 

――私のような写真初心者が、いい写真をとるために最低限気をつけるべきことを、ぜひ教えてください。

初心者の方は、コンパクトデジタルカメラを使っている場合が多いと思います。

スイッチを押して最初にレンズが出てきたとき、画角がいちばんワイドになっているんですが、だいたいの方は、そこから撮り始めてしまう。

そうすると撮りたいと思っていた対象が、どうしても小さく写ってしまうんです。

 

――たしかに、撮りたいものがイメージどおり撮れないことが多いです。

よくあるのですが、「すごくキレイな夕日だったんですよ!」と口で言っても、写真にはすごく小さく写っていて、第三者に見せたときに伝わらない。

それを解消するには、被写体に対してちょっとズーム(拡大)して画角を狭くしてあげる。そこから撮り始めるといいんです。

というのは、人間の目って自動的なズームレンズなんです。ふだんはかなりワイドで見ているんですが、ある対象物に集中すると自動的に望遠レンズのようにズームするんです。

ですから、画角を自分の目に近づけてあげると、そのギャップはなくなります。

 

――イメージどおりにいかないのは、自分の目とのギャップが生じていたのですね!

もうひとつ、撮影後にカメラで画面を見ますよね。たぶん9割以上の方が、見ておしまいにすると思うんですが、とりあえず拡大して見るというクセをつけるといいと思います。

拡大すると何が写っているか、写っていないものはないか、そこに隠れているものが見えてくるんです。自分で添削するような気持ちで見るといいですよ。

 

――ありがとうございます! それでは早速、先生のアドバイスを携えて、ちょっと外へ出て撮影してみましょう・・・。

 

 

編集A
「NHK学園前の公園にやってまいりました」

清田先生
「あ、ちょうどここに花壇がありますね。では、まず撮ってみてください」

編集A
「は、はい! あの花をねらってパチリ!」

【最初の一枚】

【最初の一枚】

編集A
「トホホ・・・、ピンクの花が撮りたいのですが、なんだかうまく撮れません・・・(涙)」

清田先生
「まず、撮影する向きがこれでいいか、手のひらをかざして影の方向を確認してみましょう。逆光で撮るといいのですが、どちらが逆光になりますか?」

清田先生
「そうです。では、今度は撮りたい花にもっと近づいて撮ってみましょう。もっと低い位置から、花の高さに目線を合わせて撮ってみましょう。もっと、もっと・・・」

編集A
「おお!ぜんぜん違います!(驚)」

【清田先生のアドバイスを受けての一枚】

【清田先生のアドバイスを受けての一枚】

編集A
「トリミングをしないで、こちらが撮れました!

この日は日差しが強く、花もお疲れ気味でしたが、なんだか私には花の表情が見える気がします。

ちょっとしたアドバイスで、こうも変わるとは。もっと上手になれそうな気がしてきました。先生ありがとうございます!」

 

 

 

――清田先生が、添削をするうえで心掛けていらっしゃることは?

どうしてそういう写真になったのか、写真の外で何が起こっているのか、というのを想像しながら添削をするよう心がけています。

行事や風景の写真でしたら、インターネットでどんな行事なのか、本来はどんな風景なのかを調べてアドバイスするとかですね。

 

――「お、これは!」という作品に出合うことはありますか?

当然これはなかなか撮れないなという写真もいっぱいあります。

やはり、ご家族とか可愛いがっているペットとか、沖縄に住んでいますとか、身近な対象を撮っているものには、いい写真がいっぱいあります。

 

――被写体に愛着があると、自然と写真にあらわれるのですね。では最後に、ずばり上達の秘訣を教えてください!

鑑賞者あっての写真ですから、とにかく人に見せてください。

褒めてもらえれば八割がけで糧にして(笑)、けなす人がいたら、その意見を真摯に受け止めればいいんです。

たくさん撮って、たくさん人に見せる。たくさん意見をもらって自分のものにすることが、いい写真を撮るために大事なことだと思います。

 

(このインタビューは2018年6月のものです。)

 

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