【コラム】NHK学園通信講座を支える先生にインタビュー! 教える人

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2020.03.01

「新・書道」講座や「漢字かな交じりの書」、「筆ペンレッスン」講座の手本執筆、そして生涯学習書道展の審査でおなじみの石飛博光先生。親しみやすい字で人気の先生にお話をうかがいました。

(このページの書は、すべて石飛先生の作品です。)

 

石飛博光(いしとび はっこう)
書家。1941年北海道生まれ。北海道赤平高校在学中から書を本格的に学び、東京学芸大学書道科入学。同時に金子鷗亭氏に師事。師の提唱した誰にでも読める「詩文書」の創作に精力的に取り組む。NHK「書にきく禅語」出演

 

遊びから書の道へ。

石飛先生の書。濃墨と淡墨で「窓」の文字の濃淡の違いが面白い漢字かな交じりの作品。

石飛先生の書。濃墨と淡墨で「窓」の文字の濃淡の違いが面白い漢字かな交じりの作品。

――書との出会いを教えてください。

小学校の4年生のときに書道塾へ通い始めたのがきっかけです。

近所の遊び友達がみんな通い始めて、塾の日は遊び友達がいなくなってしまうので母に頼んで行かせてもらいました。遊びに行くのが目的でした(笑)。

でも、友達は中学に上がると同時にやめてしまい、僕一人だけ残ったんです。ちょうどその頃、小学校に旭川教育大学を卒業した先生が赴任してきました。

先生は大学では書道を専攻されていたらしく、私が通っていた書道塾にも通ってくるようになって、とても熱心でした。

下宿先に遊びにいって、大学時代の作品を見せてもらったり、大学時代の話を聞かせてもらったりして、ワクワクしました。

そのうち少ないお小遣いで書道の雑誌を数冊買い求めたりして、大人の人たちに交じって、自由にたくさんのものを勉強させてもらいました。

 

―― 一番お好きな古典は何ですか。

なかなか気が多くて一つに絞れないけれど、顔真卿(がんしんけい)の字が好きです。

雄大な感じ、スケールが大きい。人柄や人物像、生き方に惹かれます。

洗練された王羲之のようなものも習うけれど、「造像記」や、隷書だとか、木簡とか、力強い調子のものや人間味溢れるものが好きです。

※顔真卿:唐代の書家。姪の弔文の原稿である「祭姪文稿(さいてつぶんこう)」が有名。

 

 

 

書いて楽しくなくちゃいけない。

 

 

――NHK学園の書道講座では古典の臨書を基本として大切に指導しています。
やはり臨書を積み重ねたあとに創作に取り組むのがいいのでしょうか。

臨書のための臨書ではいけない。臨書は創作のためにやることが大事。行きつ、戻りつ。臨書して創作に挑戦すること。

初めは下手でも次第にしっかりした勢いのある作品ができるから、臨書だけをずっと続けるというのでは効果的ではない。

 

――詩や俳句などを題材にした作品(漢字かな交じり作品)もよく書かれますが、
題材になる詩などは常日頃から読まれますか。

私は名文を探すのが得意です。結構いい詩文を選びますよ。でも、日ごろからじっくり読む時間がなかなかとれなくて、作品作りに追われて、やむなく手元にある詩集を開いて…ということの方が多いかな…(笑)。

詩文は3~5種類を選び用意して書きます。常に一種類だけを書くのではなく、数種をいろいろ書きくらべます。その中から最後の最後、一つに選び絞ります。

いよいよ締切だというときにはグッと絞るけど、それでも2つ3つは追いかけますね。一つに凝り固まらないほうがいいです。

 

 

 

 

 

――NHK学園では漢字の創作を指導する講座(「書道 漢字・創作を楽しむ」)が新たに開講しました。
創作で最も大切なことは?

書いて楽しくなくちゃいけない。太く書いたり、細く書いたり、いろいろ変化をつけて楽しんで書いてみたらいい。

一枚書いて傑作はできないし、いつ傑作ができるかわかりません。私の経験では1枚目から5枚目くらいの間に傑作ができることが多いものです。

はじめは新鮮な気持ちで書けるからいい。1枚目から気合を入れて書きましょう。ルンルン気分で書いているときにふっと良い作品が書けるものです。

 

 

自分を「よくやったね!」とほめてあげること。これが大切です。

 

 

――書道以外で大事にされていることがあれば、教えてください。

僕は飽きやすい性格で、何をやっても長続きしない。でも、書道だけは飽きないでこうして何とか続けている。こんなに続けられるものは珍しいんじゃないかな。

絵も、好きだし描いたこともあったけど、じっくり描く余裕がもてないのですよ。書道は墨一色。失敗したら、新しい紙で書き直せばいいから何とか続けることが出来ている。

書き上げた後は、見るのは嫌でも、じっくり見て反省することは大切でしょうね。

失敗はつきものだけれど、反省して、工夫して、考えて…。

すぐ捨てるのではなくて、その中にもいいものがある。それを生かすことを考える。それが大事です。

簡単には捨ててはいけない。見直すことは次のためになる。そして、自分を「よくやったね!」とほめてあげること。これが大切です。

 

山頭火の句「ほろ ほろ 酔うて 木の 葉 ふる」

山頭火の句「ほろ ほろ 酔うて 木の 葉 ふる」

(このインタビューは2020年3月のものです。)

※「書にきく禅語」の過去の放送はネット視聴が可能です。NHK Youtube、「NHKどーガレージ」でご覧いただけます。