【コラム】NHK学園通信講座を支える先生にインタビュー! 教える人

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2019.10.16

囲碁に目覚めたのは18歳のころという保田先生。ゲームソフトで覚えた囲碁にのめりこみ、そこから囲碁人生をスタートされたそうです。今回は、白と黒の深~い世界をやさしく案内してくださる先生に、囲碁の魅力をうかがいました。

 

保田大地(やすだ だいち)
中央大学囲碁部出身。囲碁インストラクター。囲碁ライター。NHK学園囲碁講座の教材執筆に協力。

 

 

孔子も家康も囲碁好きだった!

 

 

――保田先生、本日は囲碁について、いろいろお聞かせください。

あの、まったく関係ない話からなんですが、碁盤は縦と横で大きさが違うのをご存知ですか?正方形ではなく長方形、縦の方が微妙に長いんです。打つとき斜め上から見るからでしょうか。

ちなみにもう1つ囲碁トリビアを。石の大きさも黒と白で違うんです。

 

――ええ、どうしてですか!?

白は膨張色のため、同じ大きさだと白の方が大きく見えて、並べたときに白の方が勝っている印象を与えるんです。だから白の方がほんの少し小さく作られているんですよ。

 

――なるほど~。私は囲碁初心者ですが、今のお話だけで、すでに十分面白いです!また私自身、囲碁をやってみたいと常日頃あこがれてはいるのですが・・・。

囲碁は、まず歴史がすごいゲームです。たとえば、オセロなどはつい最近できたもので、歴史が数十年しかないですが、囲碁の歴史は3000年、4000年といわれています。

 

――そんなに長く親しまれているということは、やはりとても面白いということですね。

孔子が囲碁について記述している文献もあります。三国志の武将なども囲碁に親しんでいたようですよ。

たとえば有名な関羽(かんう)という強い武将がいますが、あるとき毒矢が腕に刺さって手術することになりました。麻酔もない時代、どうやって痛みに耐えたかというと、酒を飲みながら囲碁を打って、集中している間に手術をしたという逸話もあります。

 

――徳川家康もでしょうか?

家康は有段者といわれています。江戸時代、囲碁の強いものに給料を与えたのが、現在のプロ棋士の元祖といわれています。

その棋士たちに指南をさせたり、打っているところを観戦したりしていたそうですよ。

 

▲あの家康も・・・。

▲あの家康も・・・。

 

 

左脳と右脳をバランスよく使うゲーム。

 

――本日、先生にお会いするにあたり、私も入門の問題を解いてきたんです。しかし、ルールがオセロとまじってしまい・・・。

オセロのようなゲームだと思っていいんじゃないでしょうか?

 

――い、いいんですか!? そもそも勘違いしていたのですが、囲碁は白黒の石の数を競うのではなく、石で囲んだ陣地(余白)が広い方が勝ちなのですよね?

最終的には「余白を数える」ということになりますが、余白である「地」というのをどう考えるかなのです。

「自分だけが石を(取られる心配なく)置けるところ」が陣地ですので、結局は石の数を競うということと同じなのですね。

白の陣地に黒石を置いても、最終的にはポロポロとられてしまうのです。

 

――私が解いた問題はたったの1手でしたが、やっている最中は脳の何か所も使っている気がして、「このゲームはとんでもないぞ!」と思いました。そして解けると非常にうれしい!

囲碁は、左脳と右脳をバランスよく使うらしいんです。

オセロや将棋は「先を読む力」が大事だといわれていて、もちろん囲碁でも大事なんですが、囲碁の場合、「先を読む力」だけではなく、「なんとなく空間を把握して、このあたり・・・」という力も必要なんです。

 

▲「囲碁入門」ドリルの問題を解いてみたところ、普段使っていない脳の部分がフル回転!

▲「囲碁入門」ドリルの問題を解いてみたところ、普段使っていない脳の部分がフル回転!

 

――普段使っていない脳の部分を使った気がしたのは、空間を把握するためだったのですね。

大人になってからでも脳を使うと若返りますし、左脳と右脳をバランスよく使うので脳のトレーニングにもなります。

実際、医師の方で認知症予防と囲碁の関係を研究している方もいらっしゃいますよ。

 

――囲碁は四方八方を見ている気がして、頭をフル回転させるイメージです。先ほどの武将が愛した囲碁の話と関連があるのでしょうか?

戦国武将などは、戦場全体を見渡さなければならないですから、一部分ではなく全体を見渡して、この部隊を犠牲にしてこちらを助けるなどもあったりするわけです。

まさに囲碁でも、こちらの石を捨ててこちらを助けるとか、石を捨てる代わりに陣地をとるとか、そういう選択をする時があります。そんなところが戦国武将に好まれたのかもしれません。

最近では、経営者や政治家の中にも囲碁をやっていらっしゃる方がいますよ。

 

 

 

囲碁のルールは実はやさしいんです。

 

 

▲囲碁では、進みたい方向に石を加えていきます。

▲囲碁では、進みたい方向に石を加えていきます。

――ところで先生が囲碁を始められたのは?

18歳くらいの時です。同業者の中では圧倒的に遅いです。はじめは中古のゲームソフトで囲碁を覚えました。将棋は逆に5歳くらいで覚えたんですが、からっきしですね。

 

――なぜでしょう?

将棋は動くじゃないですか。オセロもひっくり返るじゃないですか(笑)。囲碁は、一度置いた石は逃げていくことはないのです。たとえば、この石を移動させたいと思ったら、その方向に石を追加して並べていくわけです。

 

――そのようにじっくりと石を打っていくのが囲碁の醍醐味なのですね。

囲碁のルールは本当にやさしいんです。ルールを覚えた後に、いくつかハードルはありますが、乗り越えれば、いろいろな人と対局できて交友関係も広がります。年令、性別、国籍が違っても対局できるのが囲碁のいいところです。

 

――それでは最後に、これから囲碁をやってみたいと思っているみなさまにメッセージをお願いできますでしょうか。

趣味として始めるなら何歳からでも大丈夫です。私の祖父も70代から始めました。最初は小さい碁盤でやるといいかもしれませんね。

対局の時はどんどん失敗していいんです。自分の好きなように打っていけばいい。

囲碁を始めると、きっと見ている世界が広がりますよ。

 

(このインタビューは2019年10月のものです。)

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