通信制高校の種類としくみ、選び方
選ぶ際に見るべきポイントをお伝えします。

公立通信制高校のメリットはなんといっても学費の安さです。高校の卒業資格を与えることに重点を置いているので、教育課程にしたがった科目の学習が中心です。学習指導要領に定められた教科学習が中心で、教育指導要領外の教育活動はあまり行われていません。また、担任や科目の指導に当たる教員は公立高校の先生なので異動があります。いい先生に巡り会えたと思っても異動により関係が断たれてしまう可能性もあります。
私立通信制高校は、その設置者により、それぞれ特徴的な教育活動を行っています。「大学進学コース」や「国際コース」など教科学習の部分で特長を出している学校もありますし、設置母体となる企業や学校法人の特色・強みを生かした独自性に富む専門的な学びやプログラムを展開している学校もあります。充実した設備を備えている学校もありますし、講師として専門家を招いている学校もあります。その分、学費負担は大きく、学校やコースによっては、私立の全日制高校より高い料額となる学校もあります。また、これは通信制高校に限ったことではありませんが、私立の学校にはそれぞれ建学の精神があり、その学校らしさ(校風)を強く打ち出している学校が少なくありません。生徒によっては合わないと感じることもあります。一方で、公立高校のような先生の定期的な異動がないため、信頼のおける先生が卒業まで見守ってくれるというメリットもあります。
「スクーリングで他の生徒と一緒に寝泊まりをする学校は避けたい」というお話もよく聞きますが、私立の通信制高校の場合には、本校のある都道府県で宿泊を伴うスクーリングへの参加が必須という学校もあります。ご自分が希望する学習の条件と学校の教育活動が合っているか、とりわけご自分が学校に期待するものと学校の雰囲気が合っているかをよく確かめてから出願されることをおすすめします。
広域通信制高校
私立通信制高校の中には、置かれている自治体に限らずに生徒を募集している学校があります。入学できる地域が3つ以上の都道府県にまたがる通信制高校のことを「広域通信制高校」と呼びます。広域通信制高校は、本校の置かれている自治体によって設置認可を受けていますが、本校のある自治体以外の地域からも入学することが可能です。
設置の基準は自治体によって異なり、細かい基準を設けている自治体もあれば、比較的緩やかな自治体もあるなど、さまざまです。
NHK学園は東京都の認可を受けた広域通信制高校です
NHK学園は東京都国立市に本校を置き、1962年に東京都の認可を受けてNHKが設立した広域通信制高校です。東京都が求める質の高い教育環境を整えています。入学は日本全国はもちろん、海外からも可能です。日本の国籍、もしくは住民票を持っていることが入学の条件です。

「単位制」は学年による教育課程の区分を設けず、学校ごとに決められた単位を修得すれば卒業が認められる制度です。生徒は学校が定めた教育課程の中から、その年度に履修する科目を自分で選択して決めることができます。単位制の高校でしたら、一部科目の単位を修得できなかった場合でも、その科目だけを履修しなおせばよいのです。通信制高校には単位制の学校が多くあります。
転入学・編入学する場合も、前の学校で修得した単位を引き継ぐことができますので、入学後の負担を軽くすることができます。
ただし、転入学については、これまでの学習状況によって、いつ転入学するかの判断が変わってきます。

前期・後期と1年が2期に分かれていて、それぞれで履修する科目も異なり、単位修得していく、という場合を別にしますと、その年度に履修した科目について単位を修得したと認められるのは、年間の学習活動(通信制の場合はレポート・スクーリング・定期試験など、全日制の場合は出席日数・提出物・定期試験など)が完了する年度の終わりであることが一般的です。年度の途中で転校すると、その年度の学習は完了していないので、そこまでの学習は修得単位としては引き継がれません。
転入学のタイミングはいつがいいのか。より詳しく知りたい方は「ベストタイミングはいつ?通信制高校への転入時期」をお読みください。
サポート校
通信制高校について調べているとよく出合うことばのひとつに「サポート校」ということばがあります。「サポート校」について説明しましょう。
まず、通信制高校について説明します。通信制高校は学校教育法第1条で規定された高等学校の一つです。学校教育法第1条で定められた学校は「一条校」と呼ばれますが、国が教育課程や教育の目的を法令で定めています。通信制高校の卒業資格取得の条件(3年以上の修学、文部科学省が定めた必履修教科・科目を履修し、74単位以上を修得、卒業までに特別活動に30時間以上出席)も法令で定められたものです。
通信制高校によっては、指定するサポート校にも所属することが入学の条件となる場合があります。日々の学習支援はサポート校、単位修得や卒業の認定は通信制高校と分担するイメージです。当然費用もそれぞれに発生します。入学の前には、入学する通信制高校と所属するサポート校、それぞれの案内をよく読んで、トータルでかかる費用を正しく把握することが大切です。
日々通っているサポート校が自分の高校だと思っていたので、卒業証書が知らない学校名で発行されていて驚いたという話も聞きます。資料をよくみて、不明な点は細かく確認しましょう。

NHK学園はすべての教育活動を自校内で行っています
NHK学園にはサポート校はありません。すべての教育活動をNHK学園が行っています。生徒は東京本校(東京都国立市)と全国にある協力校でスクーリングに参加したり、試験を受けたりするなどしています。協定を結んでスクーリングの教室を提供していただくなど、NHK学園の教育に協力をしていただいている学校です。
技能連携校
「技能連携校」ということばを見たり聞いたりしたことのある方もいるかもしれません。
通信制高校や定時制高校が技能教育施設と連携することで、高校卒業資格と同時に、技能連携校の修了・卒業資格を得ることができる制度があります。「技能教育施設」にあたるのは、主には高等専修学校です。
生徒は、商業や工業などの専門科目を高等専修学校で学ぶのと同時に、その学校が連携している通信制高校(もしくは定時制高校)で高校普通科科目を学びます。専門科目も一定程度まで高校の卒業に必要な単位に認められるので、2つの学校にそれぞれ通うのと比べて負担が少ない点がメリットです。普通科科目のスクーリングも技能連携校内で行われるケースもあります。
高等専修学校とは
高等専修学校は、専門学校とも、高等専門学校(いわゆる「高専」)とも異なります。ことばが似ているので、間違いやすいので、違いを説明しましょう。高校卒業後に専門学校に進学することを考えればわかるように、「専門学校」は高等教育機関に位置づけられ、入学できるのは高等学校卒業者または同等以上の学力を有する者です。「高等専門学校」は中学卒業者を対象とした、5年間の教育課程を持つ高等教育機関で「一条校」の一つです。卒業者は、大学への編入が可能です。
「高等専修学校」は、学校教育の分類としては「後期中等教育」にあたり、入学対象は中学校卒業者です。
通信制高校の卒業条件

卒業に必要な単位は74単位ですが、普通科の高校であれば普通科の必履修科目の単位を修得することも必要です。単位の修得数を最も少なく抑えようとするならば、必履修科目を含む74単位の修得が必要ということになります。必履修科目には、履修する順序が決まっている科目があるので、注意が必要です。3年間で74単位を修得すると考えると、平均として1年で25単位前後を修得することになります。
修学期間と修得単位は、前に在籍していた学校での修学期間・修得単位を引き継げます(一部例外を除く)。
通信制高校の選び方
学習スタイル
実際に通信制高校を選ぶのに、どこを見たらいいのか。学習スタイルの点で差が出るのは「スクーリングの形式」と「自宅での学習方法」「レポートの提出方法」です。どの形式・方法が自分に合っているか、よく考えて学校を選びましょう。


どの学校がいいか比較検討する段階では、各校のホームページなどインターネット上で情報収集をする方も多いと思います。しかし、学費や細かい条件などは募集要項にしか記載していない学校もあります。必ず資料を請求して、入学する年度の案内書や募集要項を確認するようにしてください。また、最終候補の学校には必ず足を運んで、学校の雰囲気を入学するご本人が確認することをおすすめします。先生や職員の話だけを聞いて決めてしまうのではなく、複数の生徒と先生、そして生徒同士が互いにどのように接しているかを見ると学校の雰囲気がわかると思います。一番いいのは、スクーリングや行事の様子を見学させてもらうことです。
また、「入学する本人の心と体の状態に合っているか」もとても大切です。特に特性のある生徒の場合には、自宅での学習やスクーリングへの参加、試験の受験などの際に、生徒の特性に合わせた対応や配慮が可能かどうか、入学前に学校に問い合わせるなど、確認の必要があります。また、人間関係で嫌な思いをしたり、頑張りすぎて心が擦り切れてしまったりしているとき、あるいは体力が減退しているときなどは、先の進路のことよりも「焦らずに心と体のコンディションを整える」という視点から高校を選択することも大切です。
さまざまな角度から検討して、まずは何よりも自分らしい高校生活を全うできる学校に出会えることを祈ります。
関連記事