通信制高校とは
学校選びの際の注意点などをわかりやすく説明します。
通信制高校とは
通信制高校の自由な学び方に魅力を感じ、選択する人が年々増えています。毎日学校へ通って勉強をする全日制高校と異なり、通信制高校では、自宅学習を中心に高校卒業をめざします。
通信制高校とは全日制、定時制と並ぶ高等学校の教育課程です。通信制高校は、学校で授業を受ける代わりに ①レポートの提出、②スクーリングへの参加、③試験で学習を進めるため、登校回数は大きく抑えられますが、卒業の際に得られる高校卒業資格は同じです。
⓵ レポートといっても長い文章を書くような内容ではありません。その単元で学んだ内容の理解度を確認し、定着を図るための課題に取り組みます。レポートの提出は、オンラインで提出する学校もあれば、郵便で提出する学校もあります。
② スクーリングは月1、2回から週5日と全日制並みの登校回数のところまで学校によってまちまちです。年5日程度の合宿形式の集中スクーリングが行われる場合もあります。
③ 学習の成果を確認する試験も年に1回もしくは2回の学校が多いようです。
「スクーリングなしで卒業できませんか」という質問をいただくこともありますが、残念ながらスクーリングなしで卒業はできません。
このような学習スタイルから、自分の生活や目的に合わせて学習計画を立て、勉強したいことややりたいことに時間を多く使える点が通信制高校の特長です。そのため、働きながら高卒資格取得をめざす人、何らかの事情で高校を中退したり転校したりした人、不登校の経験や心身の状態から全日制高校に通いづらい人、スポーツや芸術、芸能活動など、学業以外の活動と高校生活を両立させたい人、などが通信制高校を選んでいます。年齢も個々に抱える事情も多様な生徒が集まっています。
NHK学園の生徒たちの自由な高校生活
NHK学園は「NHK高校講座」と独自の学習管理システムにより、いつでもどこでも学習を進められるのが特徴です。生徒の中には、そうしたNHK学園の学び方の特性を活用して、スポーツの世界で海外も含めた合宿や遠征試合などをこなしながら学ぶ生徒、音楽のレッスンと両立させる生徒も学んでいます。自分の追究したい道を決めて入学する生徒だけではありません。自分のしたいことが何かまだみつかってはいないけれど、全日制の高校で毎日の登校や課題の提出、部活動に追われ、過密なスケジュールに流されてしまうのは嫌だと考える生徒や、じっくりと自分の好きなことややりたいこと、将来のことを考えたいからゆとりのある高校生活を送りたいという生徒もNHK学園を選んでいます。
増える通信制高校の生徒数
高校進学率が100%に近くなる中、全日制・定時制高校の在学者数は年々減少しています。一方、通信制高校の在学者数は少子化の中でも増加を続けています。コロナ禍で「学びが滞らない」と注目を集めた通信制高校ですが、高校進学の際の一般的な選択肢としてすっかり定着してきました。
高等学校在学者数比較2021~2025年度
※ 文部科学省「学校基本調査」をもとに作成
通信制高校の人気を背景に新設校も増えています。増加が顕著なのは私立の通信制高校です。専門学校や塾、株式会社が運営する通信制高校も増え、専門学校で身につけるようなスキルの修得を高校在学時から行うことを特徴に掲げる学校や大学受験指導に特化していることを謳う学校もあります。
文部科学省は、現在の状況を「違法・不適切な学校運営や教育活動が指摘されている通信制高等学校の例も一部に存在する」として質保証のための改革に乗り出しています。高等学校教育の場にふさわしい「知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等を確実に育成」することが行われているか。各通信制高校の教育内容が改めて問われる時代です。
通信制高校のさまざまなかたち
ひと口に通信制高校と言ってもさまざまなかたちがあり、先に挙げたスクーリングの回数だけでもかなりの幅があります。
通信制高校について調べていると出会うことばがあります。通信制高校への入学を検討中の方からよく質問を受ける通信制高校に関わる用語について、説明します。
通信制高校の種類について、詳しく知りたい方は「通信制高校の種類としくみ、選び方」をお読みください。
1. 広域通信制高校
入学できる生徒の居住地域が3つ以上の都道府県にまたがる通信制高校のことです。
公立の通信制高校は、一般的に学校を設置する都道府県在住者が対象です。私立の通信制高校も設置の認可をいずれかの都道府県から受けていますが、そのうち「広域通信制」の高校は設置されている都道府県以外の都道府県からも入学可能です。
2. 単位制
学年による教育課程の区分を設けず、学校ごとに決められた単位を修得すれば卒業が認められる制度です。生徒はその年に学習する科目を自分で選択することができます。通信制高校には単位制の学校が多くあります。
単位制の高校でしたら、一部科目の単位を修得できなかった場合は、その科目だけを履修しなおせばよいのです。じっくり学習したい場合は、最初から4年以上をかけて学習計画を立てることも可能です。転入・編入してきた場合も、前の学校で修得した単位を引き継ぐことができますので、負担を軽くすることができます。
3. サポート校
通信制高校と通信制サポート校は異なりますので注意が必要です。
通信制高校は学校教育法で定められた学校です。レポート、スクーリング、試験など一定の条件を満たし定められた単位を修得すれば、高校卒業資格を取得することができます。
一方、通信制サポート校は、通信制高校に通う生徒を対象に、単位修得や進級に必要な勉強や精神面での支援(=サポート)を行う機関であり、学校教育法で定められた高等学校ではありません。在籍する高等学校での学習を補完するという点で「塾」や「予備校」に近いと言えます。つまり、通信制サポート校に入って勉強するだけでは高校卒業資格を取得することはできません。
通信制高校によっては、日々の学習指導はサポート校に任せて、単位修得や卒業の認定のみを行っている学校もあります。その場合、通信制高校への入学と同時に、その学校が定めるサポート校にも入校することが必須です。当然費用もそれぞれに発生します。
自分の求めるのはどのような学び方か、費用面の負担はどうか、よく検討して、ぴったりの学校を選んでください。資料をよくみて、不明な点は細かく確認しましょう。
NHK学園は広域通信制、単位制の通信制高校です。
NHK学園は東京都の認可を受けた広域通信制の高等学校です。単位制ですので、自分の裁量で各年次において履修する科目数を調整することができます。また、サポート校は必要ありません。生徒たちのレポート指導等、さまざまなサポートはすべてNHK学園が行います。本学内での学習のみで単位を修得し、卒業ができるように指導しています。
通信制高校を卒業するには
通信制高校の卒業条件
高等学校卒業の要件を確認しておきましょう。
高校卒業の要件は、「学校教育法」「学習指導要領」によって定められています。
1. 3年以上の修学
学校教育法第56条
高等学校の修業年限は、全日制の課程については、3年とし、定時制の課程及び通信制の課程については、3年以上とする。
2. 74単位以上の修得
高等学校学習指導要領第1章第4款
卒業までに修得させる単位数は、74単位以上とする。
3. 特別活動30時間
高等学校学習指導要領第1章第2款
特別活動については、各々の生徒の卒業までに30単位時間以上指導する。
<参考> ※NHK学園のページを離れます。
学校教育法 e-Gov法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026
高等学校学習指導要領 文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20230120-mxt_kyoiku02-100002604_03.pdf
修学期間については、前に在籍していた学校も含めトータルで3年間ですので、転入学・編入学の場合には、これまでの修学期間を差し引いて考えることができます。
また、卒業に必要な単位は74単位ですが、多くの通信制高校は普通科ですので、その場合は、普通科の必履修科目の単位を修得することも必要です。単位の修得数を最も少なく抑えようとするならば、必履修科目を含む74単位の修得が必要ということになります。必履修科目には、「体育1・2・3」のように履修する順序が決まっている科目があるので、注意が必要です。3年間で74単位を修得すると考えると、平均として1年で25単位前後を修得することになります。
単位についても修学期間同様に、前に在籍していた学校での修得単位も含めて74単位修得できればいいのです。全日制・定時制・通信制の単位は互いに引き継ぐことが可能です。例えば、すでに前籍の全日制高校で50単位修得していれば、転校先の通信制高校では74-50=24単位修得すればいいということになります。
特別活動については、自宅での学習が中心となる通信制高校の生徒のために、人と関わり社会性を身につけることを目的として、定められているものです。こちらも、前籍校での活動が考慮されます。
通信制高校と全日制・定時制のしくみ比較
通信制・全日制・定時制のしくみを比較してみましょう。それぞれの違いを確認し、学校選択の判断にお役立てください。
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通信制 |
全日制 |
定時制 |
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|---|---|---|---|
|
修業年限 |
3年以上 |
3年 |
3年以上 |
|
学習制度 |
単位制 |
学年制/単位制 |
学年制/単位制 |
|
学歴 |
高校卒業資格 |
高校卒業資格 |
高校卒業資格 |
|
学習方法 |
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一斉授業が中心 |
一斉授業が中心 |
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登校日数 |
月数回、年4~5日の集中登校、週5日、土日のみなど多様
|
週5日もしくは6日
|
週5日もしくは6日
|
|
通学時間帯 |
朝~夕方
※午後からなど自由度が高い |
朝~夕方
1日5~8時間 |
朝~、昼~、夕方~
1日4時間程度 |
|
卒業に必要な単位数 |
74単位以上
|
74単位以上
各校の定めにより100単位以上の場合もある |
おおむね74~84単位
|
令和5年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について
|
74 |
75〜84 |
85〜94 |
95以上 |
||
|---|---|---|---|---|---|
|
全日制 |
普通科等 |
34.0% |
20.2% |
33.4% |
12.3% |
|
専門学科 |
27.5% |
21.9% |
39.1% |
11.6% |
|
|
総合学科 |
53.8% |
31.6% |
13.5% |
1.2% |
|
|
定時制 |
普通科等 |
63.2% |
36.8% |
0.0% |
0.0% |
|
専門学科 |
68,8% |
29.5% |
1.8% |
0.0% |
|
|
総合学科 |
90.0% |
2.5% |
5.0% |
2.5% |
|
|
通信制 |
普通科等 |
100.0% |
0.0% |
0.0% |
0.0% |
|
専門学科 |
100.0% |
0.0% |
0.0% |
0.0% |
|
|
総合学科 |
100.0% |
0.0% |
0.0% |
0.0% |
定時制高校の新しいかたち(チャレンジスクールなど)
従来は仕事に就いている人が多く通っていた定時制高校も、社会の状況に合わせて変化しています。例えば、東京都では、「チャレンジスクール」という名称で自分のライフスタイルに合わせて午前・午後・夜間の3部のいずれかに通う高校を設置しています。大阪府では「クリエイティブスクール」という名称で2部制もしくは3部制の高校を、埼玉県では「パレットスクール」という名称で同様の施策を行っています。
不登校の生徒や高校を中退した生徒が高校教育を受ける場として設置された学校ですが、あくまでも登校し、授業に出席しなければ単位修得にはつながらないことに注意が必要です。カウンセリング体制や教室に入るのに躊躇する生徒向けの居場所などを設けている学校もありますが、そこへ参加することは「出席」にはなりません。履修した科目の単位修得のためには、一定時間以上の授業への出席が必要になります。自分の今の状態にその学校のしくみが合っているか、よく検討する必要があります。
学年制と単位制
「卒業に必要な単位数」については、実のところ学習指導要領に定められた条件は「74単位以上」で、通信制、全日制、定時制のいずれも同じです。しかし、全日制高校の場合には、卒業に必要な単位数を独自に決めている学校が多く、学校によっては、3年間で100単位以上の修得が必要と定めています。通信制高校と比較して求められる学習量が多く、その分、多くのことが身につくかもしれませんが、負担が大きくなります。
多くの全日制、従来からの定時制の高校は「学年制」をとっています。全日制の高校では、決められた時間割に従って授業を受けて、定期試験の結果や提出物の内容と合わせて成績がつき、年度の終わりには単位修得、という流れなので、「どの科目が何単位」なんて考えることもなく卒業を迎えたという方も多いかもしれません。
「学年制」の場合、各学年で単位修得すべき履修科目は学校が定めています。単位が修得できるか否かは、一般的には、⓵授業への出席、②課題の提出、③定期試験の結果で決定します。進級に必要な単位を修得できなかった場合は、同じ学年に留まり、その学年で履修が求められる科目を全て、もう一度最初から学習し直さなければなりません。
「単位制」の場合は、前にも述べたように、履修科目を自分で選択し、その年度に何科目(何単位分)履修するかは生徒が決められます。もし、単位を修得できなかった科目があった場合は、その科目だけを次の年度に履修しなおせばよいのです。
高等学校の卒業以外に「高等学校卒業程度認定試験(高卒認定試験)」を利用して、高校卒業と同等の学力を有していることを示すという方法もあります。「高卒認定」について詳しく知りたい方は、「高卒認定」と「高卒資格」のちがいをお読みください。
通信制高校での学習
「通信制高校の生徒はどういうふうに勉強するの?」
「スクーリングではどんな指導があるの?」
入学を検討されている方からよくいただく質問です。通信制高校の生徒たちは勉強をどうやって進めていくのか、どのように過ごしているのか、お伝えします。NHK学園の生徒の毎日の過ごし方は「1日の過ごし方」で詳しくご紹介しています。お読みください。
自宅での学習
学習の基本は自学自習です。その年度に履修した各科目について、教科書や学習書を読み、学校によってはオンラインでの授業に参加したり、オンデマンドのビデオ教材を視聴したりしながら、理解を進めて「レポート課題」に取り組み、提出をして添削指導を受けます。
レポート課題は郵送での提出の学校もあれば、オンライン上での提出の学校もあり、まちまちです。レポートの提出にはレポートごとに締切があります。自分の予定に合わせて、ゆとりのあるときにどんどん進めていくこともできます。自分が主体となって学習計画を決められるのが通信制高校の魅力のひとつです。
スクーリングについて
通信制高校には、学校に通って先生から直接、面接指導を受ける機会があります。面接指導は「スクーリング」と呼ばれることが多いです。スクーリングでは、履修科目の面接指導やホームルームなどの特別活動が行われます。スクーリングの頻度は週5日と全日制の登校回数と同じ程度のところから、月数回程度、あるいは年に一度5日日間程度の合宿形式のところなど学校によってさまざまです。
スクーリングでの指導内容
普通科の通信制高校の場合、全日制の普通科と同様に、国語、英語、数学、理科系科目、社会科系科目、体育、家庭科、情報といった科目を履修します。
基礎的な内容が中心の学校が多いようですが、学校によっては、「大学進学コース」のような大学進学のための学習に取り組むことを目的としたコースも設置されています。
NHK学園のスクーリング・登校頻度
NHK学園のスクーリングは、月に1~2回が基本です。3〜4日間連続の集中スクーリングを中心に足りない部分を毎月のスクーリングで補うことも可能です。スクーリング会場は全国にありますから、どこにお住まいでも通うことができます。
教科指導のためのスクーリングのほかに、希望者向けに高校の学習に不安のある生徒向けのレポート提出回ごとの学習項目の解説、卒業後を見据えて大学受験を含め社会で必要とされる力を育むプログラムを提供する「オンラインプラス」も用意しています。
また、学びの多様化学校(不登校特例校)として設置している「ライフデザインコース」では、1年次は年間2~4日間のスクーリングから始めて、徐々にスクーリングの回数を増やす形式です。
東京本校では、単位修得のための月1~2回のスクーリングに加えて、週3~1日の登校から選べる「登校プラス」を用意しています。
一人ひとりに合った通信制高校選びを
ぜひ学校の見学をしてください
当然のことではありますが、通信制高校を選ぶときには、学費や施設、スクーリング参加の諸条件に加えて、「学校の雰囲気」をよく確認することをおすすめします。
NHK学園に見学にいらしていただいた方に「学校を選ぶときに最も重要視するのは何ですか」と質問すると、最も多い回答は「学校の雰囲気」、次いで「教育内容」です。
「学校の雰囲気」をつくるのは先生と生徒、その相互の関係です。そして、先生と生徒がどう関わっているかがよくわかるのがスクーリングや休み時間などの様子です。普段の学校の様子を見学し、ご自分の目で確かめることをお勧めします。
状態に合わせた学校選び
心身ともに健康で安定した状態であれば、新しいことに挑戦する活力も、慣れない環境に挑む精神力も生まれます。しかし、人間関係で嫌な思いをしたり、忙しい学校生活で頑張りすぎたりして、気力が減退している状態のときには、挑戦や環境の変化が大きな負担になってしまうことがあります。本人の状態に合わせて、焦らずに、「心と体のコンディションを整えることに重点を置いて高校を選択する」という視点を持つことも大切です。
多感な時期を過ごす10代後半の生徒たちは高校生活を通じて大きく変化します。入学の時点であれもこれもやることを固めてしまうのではなくて、入学時には少しゆとりを持って、在学中にきっと見つかるだろうやりたいことをプラスしていけるような選択の余地のある学校選びをおすすめします。
高校3年間を全うできるように
通信制高校で学ぶ生徒が増えてきたからでしょうか。このところ通信制高校の在籍者からの転入学の相談が増えています。
「入学した通信制高校が合わなかった」「思った以上に学費がかかって困っている」という相談もありますし、「中学校までの不登校から心機一転、頑張って週5日通学の通信制高校を選んだけれど通えない」というご相談もあります。
繰り返しになりますが、学費や卒業のための条件を確認すること、入学する生徒自身の状態と意思を確認すること、最後は本人が実際に学校の様子をみて、学校の雰囲気を体感すること。どの生徒もミスマッチということのない学校選びができるといいな、と思います。保護者としては、よく学費や条件などを確認すること、そして入学する本人の状態に合った内容であること。こうした入学前の検討を十分に行ったうえで、転校をすることなく3年間を過ごせる高校に出会えることを祈っています。
NHK学園の生徒の様子、雰囲気
NHK学園の生徒は、どちらかというとおとなしく、スクーリングもそれぞれ自分のペースで取り組める落ち着いた雰囲気です。在校生・卒業生に話を聞くと、「しっかり勉強に取り組みたいからNHK学園に入学を決めた」「知人から勉強にもしっかり取り組めるからとNHK学園を勧められた」といった話が出てくることも多いです。
さらに、「生徒同士の距離感が心地いい」「遠すぎず、近すぎず、程よい距離感で見守っていてくれる」といった声も大変多く聞かれます。先生については、「話をよく聞いてくれる」「否定しないで話をしてくれるので安心して相談できる」といった声が多く、NHK学園が持つ、真の面倒見の良さがうかがえます。
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