【第28回NHK全国俳句大会】題詠作品づくりのヒント(小澤實さん)
第28回NHK全国俳句大会の作品の募集が始まりました!
(大会の詳細はこちら)
これから題「間」で作句する方に向けて、大会選者の小澤實さんに題詠の作品作りのヒントをいただきました。
第28回NHK全国俳句大会選者
小澤實さん
昭和31年 長野県生
「澤」主宰 俳人協会副会長 読売俳壇、東京新聞俳壇選者。
句集『砧』『立像』(俳人協会新人賞)『瞬間』(読売文学賞詩歌俳句賞)『澤』(蛇笏賞。俳句四季大賞)。評論『俳句の始まる場所』(俳人協会評論賞)。
著書『名句の所以』『芭蕉の風景』(読売文学賞随筆紀行賞)。
「間」一字から発想する
兼題「間」一字での意味は、ものそのものを指し示しません。この字は、基本的に二つのものに挟まれた部分を指します。
まずは、一字の「間」を用いた句から見ていきましょう。
天地の間にほろと時雨かな
高濱虚子『六百句』
この句には、「十一月二十二日、長泰寺に於ける花蓑追悼会に句を寄す。」と追記がありました。虚子門の俳人、鈴木花蓑の追悼句だったのです。虚子という存在が天地の間に大きく広がっています、そして「ほろと時雨」と涙を流すのです。それは、花蓑への最大級の敬意を示すことにもなっています。この事情から離れても、名句としてもいいでしょう。
うみやまのあひだの旅の冬に入る
田中裕明『全句集』
こちらの句は「あひだ」と表記していて、「間」の字は用いていません。しかし、参考になるかと思います。「うみやまのあひだの旅」とは、山が多くて海に囲まれている日本での旅ということになります。日本の風土の中で生きてきたことをこう表現しているのかもしれません。裕明の早すぎた最晩年の句です。
「天地の間」「海山の間」は、現代でも使えるフレーズだと思います。大きな句が得られる可能性もあります。ただ、かなり難易度は高いでしょう。
「間」を用いた熟語を用いる
題詠の際、その語だけで考えていないで、その語を含んだ熟語で考えてみるということもたいせつなことだと思います。漢和辞典を開いて、「間」を用いた熟語に何があるかを調べてみましょう。そして、そこから発想してみるのです。「間」だけで考えているよりもだいぶ自由に発想できるはずです。
漢和辞典の「間」の熟語に「人間」というものを見つけました。これはおもしろい素材になるのではないでしょうか。
人間になき虎河豚のたのしき貌
加藤楸邨『まぼろしの鹿』
これは水槽で生きている虎河豚の様子を描写しているのでしょう。生きている虎河豚のたのしき貌ほどのたのしき貌は人間にはない、というわけです。
人間をやめるとすれば冬の鵙
加藤楸邨『吹越』
人間をやめて次になるとすれば、それは冬の鵙である、といいます。楸邨は人間に対して、厳しい姿勢で向かい合います。
「人間」とは、大きな謎であり、俳句にとって大きなテーマになりうるものです。
誓子の句集を開いていたら「岩間」ということばをみつけました。これも「間」を用いた熟語です。
海女達の岩間に脱ぎし紅きもの
山口誓子『青銅』
「岩間」は岩と岩との間。そこに海女たちが脱いだ紅き着物を見いだしたというのです。
「岩間」は伊勢物語にも用いられている古典語、俳句にもなじみがいいはずです。
間夜や水に根のばすヒヤシンス
椎野順子『間夜』
「間夜」は契った男女が、次に逢うまでの夜です。順子は、水栽培のヒヤシンスと取り合わせました。「間夜」は万葉集に使われていた古典語です。
さきほど、「澤」の選句をしていて、次の句をみつけました。
歯間にアスパラガスの筋ぞエンドロールまで
中山あい 「澤」令和八年七月号
歯と歯の間に、ランチで食べたアスパラガスの筋が挟まっているのがずっと気になっていながら映画を見ていたが、ようやくエンドロールを迎えたというのです。早くアスパラガスの筋をしっかり取り去ってください。
「歯間」というのも、身体的でおもしろいことばだと思います。「歯間ブラシ」も使えますね。「もの」であることが、うれしいです。大傑作が生まれるか、と問われると「はい」とは答えにくいですが。
他に「仲間」なども使える熟語だと思います。ご挑戦ください。
間の字を含んだ季語
最後になりますが、間の字を含んだ季語を使ってみるという手も、もちろんありです。
「雪間」「間引菜」、ぜひ歳時記でご確認ください。
「間」の字、なかなか奥行のある一語でした。ぜひ「間」の字の題詠にご挑戦ください。

あなたの一句をお待ちしております。
小澤實さんからのメッセージ
NHK全国俳句大会は日本における最大規模の俳句イベントです。投句数も多く、選者も魅力的な俳人が揃っています。投句しなければ、渋谷のNHKホールの壇上で、選者と顔を並べることはできません。最近は当該選者以外の俳人の意見を聞けることもうれしいことです。ぜひともご投句ください。みなさまの挑戦をお待ちしています。
この記事で語られたヒントを胸に、ぜひご自身の作品を投稿してみませんか。自由題2句、または自由題2句+題詠1句の3句1組で応募できます。
投稿締切は2026年11月16日(月)。ネット投稿は当日23:59まで、郵送は同日必着です。「うまく詠めない」の壁を越える一歩は、まず一句を送り出すことから始まります。あなたの個性が生き生きと現れた作品を、選者一同、心待ちにしています。