歌人でNHK学園短歌友の会選者の松村正直先生による好評連載「秀歌を読もう」第8弾をお届けします。
秀歌を読もう(8)
折り鶴は肉を持たない鶴だから風にしゃらしゃら鳴らすたましい
田村穂隆『湖とファルセット』

病気の治癒や平和などを願って吊される千羽鶴の様子。「肉を持たない鶴」という捉え方が印象的だ。折り鶴は紙でできているので、本物の鶴と違って肉体感がない。
そのため、風に吹かれて軽やかに美しい音を立てている。重い肉体を持たない分、純粋な精神だけの存在となって、折った人の願いや祈りを伝えてくれるのだ。
一方で、本物の鶴や人間には肉体がある。魂や心だけになることはできない。歌集では肉体や性別を持つことに対する違和感や葛藤が大きなテーマになっている。この歌も、折り鶴の話を通じて「肉」と「たましい」の問題を鋭く投げ掛けている。
NHK学園短歌講座講師 松村正直
(NHK学園短歌講座機関誌『短歌春秋』169号/2024年1月発行 より)
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