松村正直先生による好評連載「秀歌を読もう」第5弾。松村先生には今年度から「短歌友の会」選者もお願いしています!
秀歌を読もう(5)
短歌講座機関誌『短歌春秋』連載の好評連載「秀歌を読もう」第4弾です。
書くことは消すことなれば体力のありさうな大きな消しゴム選ぶ
河野裕子『体力』

文章を書く時にどこも直さずに書き上がることなどほとんどない。たいていは何度も何度も書き直し、推敲した末にようやく完成する。
「書くことは消すこと」という断定が、ものを書く苦心をありありと伝える。
「体力のありさうな」が印象的だ。体力と言えばふつうは人間や生きものに使う言葉だが、それを消しゴムの形容に用いている。まるで頼もしい相棒のように、身近にいてサポートしてくれる存在なのだろう。
四句が九音と字余りになっていて、どっしりとした消しゴムの感触を思わせる。どれだけ使っても大丈夫という安心感が、書き続けることへの励ましにもなっているのだ。
(NHK学園短歌講座機関誌『短歌春秋』166号/2023年4月発行 より)
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