【俳句コラム】麒麟流作句法(3)

このコラムでは、俳人・西村麒麟さんならではの切り口で俳句づくりのコツやポイントをご紹介しています。好評シリーズの第3回です。

自慢話はしない

友達の家に大きな甲虫   西村 麒麟

 少年の日を思い出して作ったような句ですが、実際には想像力だけで作った句です。句意は読んでいただいた通り、友達の立派な甲虫を羨ましいなあと思っているという俳句です。

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僕が俳句を作る時だけで無く、文章を書く際にも心掛けている約束事として「自慢話をしない」という点に注意しています。

実際に俳句や文章を書いてみるとわかりますが、これが意外と難しい。なぜなら多くの人は他人よりもよく見られたい、立派な作品であると褒められたいと願うからです。僕だってもちろんそうです、しかし良かれと思って書いた事が他人からは「自慢話」のように見えてしまうと作品が損をします。

お隣さんから「昨日はすき焼きだったの」とか「海外旅行に行ってきたの」と聞かされても、正直なところ聞かされる方は特に嬉しくはありません。
それよりは「今朝食パンが焦げちゃって」等のトホホ話の方が会話が弾みそうです。
 
無理矢理不幸な話をする必要は全くありませんが、俳句も対話同様に、相手がこの話(俳句)を受け取ってどう感じるかを想像する事をお勧めします。

出来るだけ俳句や文章では、失敗やトホホなエピソードを愉快な話として披露するようにしています。そういった正直な話は人間味が出やすく、俳句にもなりやすい素材だと考えています。


冒頭の一句、僕が立派な甲虫を持っている、だけでは俳句として面白くありません。俳句の世界の住人である僕は、ちょっと可哀想なぐらいで良いのです。

 

似たような僕の俳句に

ともだちが滑つて行きぬスキー場   西村 麒麟

というのもあります。

 

 

正直言うとスキーには行った事が無いのですが…。

 

西村麒麟氏

西村麒麟

1983年生まれ。東京都江東区在住。俳句結社「古志」同人。第65回角川俳句賞受賞。句集に「鶉」「鴨」。

現在、NHK学園市川オープンスクールで「西村麒麟・ 俳句塾」を開講中。金曜の夜、麒麟先生と俳句をたのしんでみませんか。

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