第28回NHK全国短歌大会の作品の募集が始まりました!
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本大会には、新作15首を1組として優れた作品を顕彰する「近藤芳美賞」があります。これから、連作で作歌する方に向けて、大会選者の小島なおさんに作品作りのヒントを、第27回NHK全国短歌大会の近藤芳美賞受賞作品を例に挙げて、教えていただきました。
連作の契機やテーマを幹、テーマに繋がるとりとめのない日々や記憶の断片を枝葉とするとき、枝葉の見せる表情や自在さ、個性にこそ連作の魅力が宿ると思っています。それらは「地の歌」と呼ばれることもありますが、ひとりごちたのがふいに漏れてしまったような小声の言葉。誰かに何かを伝える伝達の役割を離れて、ただそこに在るだけのように見える意味を持たない言葉。メッセージや主張のない言葉こそが連作の幹をゆたかに支えていることは多くあるでしょう。
昨年度の近藤芳美賞受賞作、鈴木ベルギさんの「しずくを進む」をテキストに連作の構成を具体的に見ていきたいと思います。
右のことを右を指しつつ「左」と言う父は今年で八十一歳
忘れちったい。と結ばず父は秋の日に黒ネクタイを首から下げて
父の手の皮膚はつめたくやわらかい和菓子のようだ薬を塗れば
冒頭三首から。十五首は長い連作ではありません。父の年齢や老化の程度、自宅での介護。連作を鑑賞するのに重要なそれらの前提情報をはじめから具体的に示すことでテーマを最短距離で読者に伝えています。息子としての主観的な表現が比喩「和菓子のようだ」以外に書き込まれていない点にも、作者としての態度がよく表れています。
弟に自我のないころ切られたる庭に育った柘榴の記憶
長男という響きには慣れていて単一単二単三電池
ざらついたVHSにあるだろう太いゲージで編まれたセーター
七首目、八首目、十二首目。弟がまだ幼い頃、というのを「自我のないころ」と言い換えたことで昔の記憶である事実を示しながら、切り倒された柘榴が伸びるはずだった空白の歳月と自我が芽生えた弟のその後の歳月とが重なって意識されてきます。「単一単二単三」と徐々に小さくなる乾電池のサイズと比例するように、長男次男三男と家族への責任の大きさが変化してゆく。ゴロンと転がる単一電池の自分が家族について考えている想像には、哀しいユーモアが漂います。画素が荒く映像がざらついたVHSのホームビデオ。手編みのセーターを着た自分。若かった家族の時間もろとも時代と古びてしまったのです。
これら三首は冒頭三首に引きつけて読むことで連作の味を深くしてくれますが、いっぽうで独立して読んでも見立てや語彙に個性が透けていておもしろい。「家族」の大きな属性を持ちながらも、連作の契機、核の部分にある父親との現状の生活に直接的には干渉しないという面で「地の歌」、枝葉の部分と捉えられそうです。
思っても言わないことがありすぎる屋根まで積もる雪の映像
銀色のしずくを進むかたつむり明日のことはひとまず置いて
対して見ていくと、四首目の上句、十三首目の下句などは連作の核の部分に添う心情表現がはっきりとなされています。いずれも心情を象徴する景や場面をセットに配置して一首としてのバランスが取られていますが、幹のための作品と言えるでしょう。
心情を伝える表現を数首に留めて、いかにテーマの背景にある心情を読者に想像してもらうことができるか。それが連作の使命だと思います。一見、交わりのないような枝葉の作品群が連作に適切に配置されることで、読者が枝葉から枝葉へ、そして幹へと線をひいてくれます。その線と線によって織りなされる個性的な樹形が連作のおおきさと言えるのではないでしょうか。
非常灯小さくともる玩具屋のスノードームに夜は積もれり
最後の歌。四首目の雪のイメージを引き受けながら、自分たちの日々をスノードームの外側から眺める俯瞰のまなざしが印象的です。目の前の感傷に溺れず、家族の歳月はおしなべて小さく閉じた世界にのみ存在することを教えてくれるよう。「玩具屋」の前を通りすぎてゆく幼い頃の主体の気配もかすかに思わせながら。
あなたの作品をお待ちしております。
優れた連作はまるで蜘蛛の巣を眺めているような気持ちになります。
縦糸と横糸が絡み合いながら模様をなしているさまは連作も同じと言えるかもしれません。
十五首をどのように配置するのか。
意味やひびきがどのように結びついて引きつけ合うのか。
ときに作者も意図しなかった一首がべつの一首の世界をひらいてくれる、それが連作の醍醐味です。
近藤芳美賞にぜひチャレンジしてください。
この記事で語られたヒントを胸に、ぜひご自身の作品を投稿してみませんか。
投稿締切は2026年11月16日(月)。ネット投稿は当日23:59まで、郵送は同日必着です。「うまく詠めない」の壁を越える一歩は、まず一首を送り出すことから始まります。連作でじっくり自分を描く「近藤芳美賞」(新作15首1組)にチャレンジしてみませんか?
あなたの個性が生き生きと現れた歌を、選者一同、心待ちにしています。