起立性調節障害~知って備える・上手につきあう~

2022.01.07

起立性調節障害」って知っていますか?

起立性調節障害は思春期前後に多く見られ、起立時にめまい、動悸、失神などが起きる自律神経の機能失調です。上記の症状の他にも、気分不良、倦怠感、動悸、頭痛などの症状がよく見られます。
学校へ行きたくても、朝どうしても起床することができず、遅刻や欠席を繰り返す原因として知られています。

 

中高生の約2割が発症

NHK学園の「こころの相談医」として、総合教育相談センターにアドバイスをいただいたり、保護者向けの個別相談の場をお願いするなど、専門的な観点からのサポートをいただいている国立障害者リハビリテーションセンター病院 小児科・児童精神科深井善光先生に起立性調節障害についてうかがいました。

起立性調節障害が始まるのは小学4、5年生から。中学2年生頃をピークに悪化し、高校2年生頃には軽快します。発症の頻度は、中高生の約2割に及ぶそうです。

 

原因は急激な身長の伸びと血液量不足

なぜ、思春期に集中的に発症するのでしょうか。
深井先生から発症のしくみをうかがって、納得しました。

4本足歩行であれば心臓と四肢が同じ位置にありますが、2足歩行を行う人間は、頭が上にあるため、足から血液を上に送る負荷や心臓から頭に血液を押し上げる負荷がかかっているのです。それが、急激に身長が伸びる時期には、身体の大きさに対する血液の絶対量が足りない上に、身長が伸びる分だけ血液を押し上げる負荷も増すため、頭まで血液が届きにくくなってしまいます。それが原因で、立ち上がると立ちくらみや頭痛、倦怠感を伴うというわけです。

 

外出自粛と運動不足で悪化も

NHK学園にも、「起立性調節障害だと診断を受けた」という方や、「急に朝起きられなくなって、調べて見たら起立性調節障害に当てはまる症状ばかりなんです」という方が入学のためのご相談にいらっしゃいます。朝から学校に行くことが難しいので、今の高校で出席日数が足りずに進級が難しくなってしまったというご相談や現在中学3年生だけれど、今の状態では全日制高校へ通うのは難しいと考えてNHK学園への入学を検討しているというご相談です。その件数はこの数年、特に増えているように感じます。
感染症対策としての外出自粛と運動不足によって起立性調節障害が悪化するケースが多く見られるとのこと。小児科の医師も警鐘を鳴らしています

 

本人と家族、周囲の人の理解が不可欠

NHK学園の「教育相談室」にはさまざまな相談が寄せられますが、この「起立性調節障害」は誤解を受けやすい病気の一つです。
一番身近で子どもの様子を見ている在校生の保護者の方からも、
「朝起きることができず、起床できても午前中は横になりダラダラ・・・。夕方には元気にゲーム三昧、就寝も午前2時以降です。夜遅いので起きることができず、怠けているとしか思えません。」
といったお声をうかがうことがあります。

夜遅くまで起きていれば、朝起きられない、というのも事実ですが、もしかすると本人は自分の意思に反して、<起きられない>のかもしれません。
「起立性調節障害」の場合、立っている時や座っている時には、症状が増強し、横になることによって軽減します。また、午前中は調子が悪く、午後になると回復する特徴があります。
運動不足解消のためには、適度な運動をこころがけましょう。また、室内にこもっていて太陽の光を浴びないと体内時計がリセットされないため、屋外に出ることも効果的です。散歩などを習慣化するといいですね。
そして、ご家族は、本人の起きられない辛さに目を向けること。冒頭に挙げたような症状がある場合には、高校生であっても、かかりつけ医がいれば、まず小児科にかかるのがよいでしょう。

この病気をのりきっていく上で大切なことは、この状態についての本人と家族や周囲の人の理解です。怠け病ではありません。

 

起立性調節障害とつきあいながら、上手に計画して高校卒業

自分の体とつきあいながら進学や高校卒業をめざすなら、通信制高校に進学するのは選択肢の一つです。NHK学園の場合、午後のみのスクーリングというコースはありません。しかし、「NHK高校講座」の視聴とネット学習の活用により、科目ごとに必要なスクーリングへの出席が通信制高校の中でも少ないため、朝からのスクーリング参加が難しい場合でも、計画的に出席することで、必要時間の出席を満たすことができるケースがほとんどです。起立性調節障害と上手につきあいながら、必要なスクーリング出席を満たして進級・卒業している生徒はたくさんいます。
ただし、スクーリング会場や時間割、履修する科目によって状況が異なりますので、年間の時間割を確認のうえ、入学後には担任の先生と相談しながら出席計画をたてていきましょう。
NHK学園にはどなたにも必ず付く担任はもちろん、養護教諭、スクールカウンセラー、総合教育相談センターなどさまざまな相談窓口があります。起立性調節障害と付き合いながら、高校卒業をめざしている方は、個別相談も利用してみてください。