ようおいでたなもし 松山俳句通信【第32回】

  • コラム
  • 俳句

2021.09.03

お誕生日を迎えたばかりの伊予吟会 宵嵐さんから届きました、今月の「松山俳句通信」。今回は『坂の上の雲』で有名な秋山兄弟の生誕地のお話しです。

 

 

松山市の中心商店街から少し北へ。松山城のすぐ横で観光客が多く見受けられるこの地区を歩行町(かちまち)と言います。その名の通り、江戸時代に栄えた町の中ほどに、「坂の上の雲」で有名な秋山兄弟の生家があります。

 

 

現在は公益財団法人常盤同郷会の本部として、青少年の育成に資するとともに、柔道場としての一面もあります。私も小学生の頃に、年に一度の錬成柔道大会に参加するために、この道場に来ていました。また社会人になってすぐの頃には、週末にこちらの稽古に参加して汗を流していました。

 

 

 

さて、「坂の上の雲」がNHKドラマとして放映されたのは2009年のことです。本木雅弘さん演じる秋山真之と香川照之さん演じる正岡子規の交流が微笑ましく描かれており、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

 

 

松山では、当時、正岡家は馬廻役、秋山家は歩行組に配されており、二人は今で言う小学校からの付き合いだったということです。その後同時期に東京で暮らし、同時期に予備門に在籍するなど二人の交流は続きます。そんな二人が最後に会ったと思われるのは明治30年です。

 

君を送りて思ふことあり蚊帳に泣く 子規

「送秋山真之米国行」の前書があります。真之が留学する直前に会い、その直後に読んだ一句なのでしょう。初めてこの句に接したときは然程でもありませんでしたが、ドラマを観た後に再度この句を鑑賞した時、胸が締め付けられるような息苦しさを覚えました。二人にしかわからないはずの世界感なのに、何故かすべての読み手を切なくさせる、そんな一句ではないでしょうか。

 

私から見て高校の先輩にあたる二人の偉人。そんな二人の人生と交流を頭に思い描きながら、今週も秋山兄弟生誕地を通り過ぎています。