コラム|NHK学園 生涯学習通信講座

【第28回NHK全国俳句大会】2026龍太賞連作について(髙柳克弘さん)

作成者: Admin|2026.8.03

新作15句を1組として優れた作品を顕彰する「龍太賞」。

選者のお1人である髙柳克弘さんにタイトルの付け方のヒントを教えていただきました。

連作タイトルの三原則

テーマに基づいて十五句を並べ終わったら、最後のしあげとしてタイトルを付けます。一般的には、連作の中の一句から言葉を拾います。人目をひくタイトルを付けることで、その連作の魅力はさらに増すことでしょう。「画竜点睛」となるようなタイトルの付け方について説明してまいります。

ずばり、三原則を述べますと、以下の通りです。

①全体の雰囲気に合った言葉を選ぶ
②完成度の高い句から取る
③前向きなフレーズが望ましい

 

 

「晴を待つ」に学ぶ成功例

 

前回の龍太賞の受賞者、会田繭さんの連作を参考にしてみましょう。この連作には「晴を待つ」というタイトルが付けられています。十五句の中に、

  唐辛子吊るして山の晴を待つ

 という句があり、そこから取ってきたものです。
繭さんの連作は甲斐盆地の四季をテーマにしたもので、全体的に風土愛が感じられ、向日性に富んでいました。「晴を待つ」は、まさに①の条件にあてはまります。
また、選者はタイトルになっている句は作者の自信作だろうと推測します。表題句が弱いと、どうしても評価を割り引いてしまうのです。繭さんの句は、唐辛子を干し終えたときにはまだ晴れていなかったというのがポイントです。唐辛子と晴天という決まりきった取り合わせを少しずらしてみせたのが巧いところ。また、軒のかなたには人家を見下ろす山が聳えていることを、さりげなく「山の晴」で示してみせるという、画面を構成する手腕も確かで、じゅうぶんに②の条件も満たしています。
最後に③についてです。作品の雰囲気にもよりますが、一般的には読みたくなるような、前向きで力強いフレーズが望ましく、「晴を待つ」がそれにあてはまっていることは、あらためて説明するまでもありませんね。

 

 

読みたくなるタイトルとは

 

前回、私の選者賞を獲得した多田周央さんの連作のタイトルは、「里海」でした。「里山」に比べると「里海」という言葉は、なじみのない人も多いでしょう。でも、なんとなく意味は想像できます。こちらも人の関心を引く、絶妙なタイトルの付け方でした。

タイトルには、読者に「どんな作品なのだろう」と思わせる働きがあります。内容を象徴しながらも少し余白があり、想像を誘う言葉が理想的です。

 

 

季語をタイトルにするときの注意

 

さて、しばしば季語をタイトルにした連作も見受けられますが、これにはちょっと注意したいところです。季語は、選者や俳句をたしなむ読者にとっては見慣れたものであるため、インパクトには欠けます。

作者自身の考えた、独自性のあるフレーズのほうが、作品を読んでみようという気になります。もしも繭さんの連作が「唐辛子」というタイトルであったら、どうでしょう? 「どんな内容なのだろう」と読者に思わせるのは、やはり作者自身が考えた「晴を待つ」というフレーズなのではないでしょうか。

もちろん、季語をタイトルにするのが駄目というわけではありません。そこに必然性があるかどうか、一度立ち止まって検討してみるとよいでしょう。

 

 

連作全体を象徴するタイトル

 

最後に、有名な連作を一つ紹介します。山口誓子に、俳句の歴史に刻まれた五句の連作があります(昭和七年作)。昆虫の捕食風景を克明に写しとったもので、「かりかりと蟷螂(とうろう)蜂の皃(かお)を食む」の名句が入っています。

この連作のタイトルは、「虫界変」。

カマキリがハチの頭をかじって食べていることを「変」と表したことで、人間の歴史における下剋上やクーデターとも重なり、残酷さが際立ってきます。誓子の造語で、独特の世界観がありますね。

一般的にはタイトルは連作の中の言葉を取るものですが、このように全体を象徴するタイトルを別に案出するという手もあります。

 

 

タイトルは連作の「顔」

 

みなさんの連作の「顔」ともなるのが、タイトルです。読者が最初に目にする言葉であり、作品への入口でもあります。

今回はどんなタイトル、どんな作品に出合えるでしょう。今からわくわくしています。たくさんの応募をお待ちしています!

 

 

あなたの作品をお待ちしております。

髙柳克弘さんからのメッセージ

飯田龍太は、幅広い作風の人でした。格調高い風土詠で知られますが、家族の情愛をテーマにした秀句も多く残しています。また、前衛的な作にも挑戦しています。自由にみなさんの個性を発揮していください。ひとつのテーマで十五句の連作を作るという体験は、みなさんの俳句人生の糧になるはずです。殻をやぶり、新しい自分を発見する機会としていただければ幸いです。力作を読ませてもらうことを楽しみにしています

 

この記事で語られたヒントを胸に、ぜひご自身の作品を投稿してみませんか。

投稿締切は2026年11月16日(月)。ネット投稿は当日23:59まで、郵送は同日必着です。「うまく詠めない」の壁を越える一歩は、まず一句を送り出すことから始まります。一つのテーマを連作でまとめる「龍太賞」(新作15句1組)にチャレンジしてみませんか?

あなたの個性が生き生きと現れた俳句を、選者一同、心待ちにしています。