コラム|NHK学園 生涯学習通信講座

WEBで読む『短歌春秋』精選/「秀歌を読もう」岡井隆①

作成者: Admin|2025.12.25

NHK学園の短歌通信講座の学習を支える、機関誌『短歌春秋』には短歌づくりに役立つ特集をはじめ、一諸に学んでいる受講者の作品やお声を掲載しています。

 

今回は『短歌春秋』の歌の鑑賞記事「秀歌を読もう」をご紹介します。NHK学園の短歌講座の講師などが選んだ秀歌1首を取り上げ、作者や作品の背景などを踏まえて、その歌の魅力を解説しています。


今回はNHK学園生涯学習50周年記念「岡井隆賞」の新設にちなみ、短歌講座の創設・監修者の岡井隆先生の作品を取り上げ、ご紹介いたします。

(取り上げる作品は、2011年11月~2023年4月に発行の短歌講座機関誌『短歌春秋』「秀歌を読もう」より抜粋した作品・講評になります。)

 

 

岡井隆と言えば前衛短歌の巨匠で難しい歌を作るという印象があります。それも大切な仕事であったでしょうが、私は岡井隆と言えば恋の歌と思うのです。遍歴を重ねた恋はその時々の歌で見ると恐ろしいほど真剣で胸を打ちます。
 この一首は三人の子を置いて家を出た時のものです。「最終の恋」というのですから、長い人生を掛けてようやく巡り合わせた人という思いだったのでしょう。溢れるような情感を古典の時鳥の忍び音に託した現代短歌の絶唱です。古典から現代まで短歌の可能性を大きく広げた作者です。今年七月十日、コロナ禍の中入院先から戻って自宅で亡くなりました。九十二歳。最愛の夫人一人に見守られていたと聞きます。(池田はるみ)